artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
クリスチャン・ボヌフォワ展
会期:2013/12/13~2014/02/28
メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]
メゾン・エルメスのクリスチャン・ボヌフォワ展を見る。マティスの作品との出会いを契機に、美術史の研究からアーティストに転身した作家だ。彼は、フランスの現代美術運動シュルファスに影響を受けつつ、キャンパスの枠組を解体し、コラージュと透明性の操作を行う立体絵画を追求する。仮設壁がジグザグしながら、そこに開口部を設ける会場構成を中山英之が担当しているが、作品との相性が抜群によい。
2014/02/03(月)(五十嵐太郎)
週刊ダイヤモンド(2014年2/22号)
『週刊ダイヤモンド』がマーケティングの特集を組むということで、ヤンキーに関して取材を受ける。以前、某誌でヤンキー研究者と書かれたのだが、実際は筆者から一言もそう自称せず、『ヤンキー文化論序説』の編著をしただけで、専門ではないが、それでもよいかと、いつも事前に確認している。そのうえで、この本を刊行した2009年と現在の違いを改めて考えた。この本を出したときは「文化」論がメインだった。が、その後、斉藤環が『世界が土曜の夜の夢なら』(角川書店、2012)において、橋下現象をヤンキーと結びつけたように、政治上でも前面化している。橋下自体の勢いはかつてより衰えたが、橋下的なるものはむしろ広がっているのではないか。根性と精神で乗り切れる、売られたケンカはやり返せ、キリッ! 内向きには、それで政治家の人気は上がるだろう。しかし、権力者が、国際政治も、気合いのヤンキー・スピリットでのりきれると思われては困る。どこの国にも内向きのヤンキー精神はあるだろうし、それはそれで一定の意味はあると思うが、外交の場において、むきだしにするものではない。そうした意味で、ヤンキー論は「政治」の問題にも、リアルに射程が及ぶようになった。
2014/02/03(月)(五十嵐太郎)
ザ・イースト
映画『ザ・イースト』を見る。民間のセキュリティ会社の依頼を受けた元FBIの女性が、企業を攻撃する環境テロリストの集団に潜入捜査していくうちに、やがて彼らの思想と行動にひかれていく。国家や既存の善悪の枠組が機能しないグローバル資本主義の世界において、何が「正義」なのかが揺らぐ、社会派のすぐれた作品である。現代社会の一断面をうまく切り取りながら、類例がない設定によるサスペンスとしても面白い。
2014/02/02(日)(五十嵐太郎)
さわひらき Under the Box, Beyond the Bounds
会期:2014/01/18~2014/03/30
東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]
東京オペラシティアートギャラリーのさわひらき展へ。誰もいない部屋の中を人知れず静かに航空機が飛び交う、あるいは小さな動物たちが歩く、またレコードと記憶など、前半の旧作は、すでにだいぶ見ていた。今回は天文台での新作などが追加された。展示の最後に設置された鏡と映像のインスタレーションがよかった。印象的だったのは、訪問時に来場者の9割以上が女性だったこと。なるほど、女性好みの作品かもしれない。
2014/02/02(日)(五十嵐太郎)
磯崎新 都市ソラリス 第二期
会期:2014/01/15~2014/02/08
NTTインターコミュニケーションセンター[ICC]ギャラリーA[東京都]
インターコミュニケーションセンターの磯崎新による「都市ソラリス」展の第二期に立ち寄る。筆者が参加した二回目のトークの流れも、壁にマンガで紹介されたほか、鄭州市鄭東新区の都市計画の巨大模型に平川紀道の映像、hclabによる鄭東新区街路ネットワークなどを新しく追加していた。インターコミュニケーションセンターの立ち上げで開催された磯崎の海市展がそうだったように、会期中に変化していく展覧会である。
2014/02/02(日)(五十嵐太郎)