artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

《徳川美術館》(1935)

[愛知県]

7月下旬に刊行する『あいち建築ガイド』の校正中、疑問点があり、久しぶりに徳川美術館を訪問した。古い部分は公式にも「帝冠様式」と説明されているが、私立美術館で、意匠的にも全体的に和風を目指している建築を「帝冠様式」と括ってしまうのは、概念を拡張しすぎかもしれない。なぜなら、「帝冠」の「帝」は政治や公共施設にふさわしいし、「冠」であれば、もっとデザインのハイブリッド性が必要ではないかと思うからだ。

2013/06/22(土)(五十嵐太郎)

ソフィ・カル「最後のとき/最初のとき」

会期:2013/03/20~2013/06/30

原美術館[東京都]

原美術館のソフィ・カル「最後のとき/最初のとき」展を訪れる。1階は、生まれて初めて海を見る瞬間の、イスタンブールの人たちの映像。ここにその印象を語る言葉はない。振り向いた後の表情だけを示す。そして2階は、盲人たちに最後に見たイメージの記憶を語らせる。再現はできないが、そのイメージ写真と本人の肖像と文字の組み合わせが、想像力をかきたてる。いずれも表象の不可能性というべきものに肉迫しようとする作品だ。

2013/06/21(金)(五十嵐太郎)

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レオナール・フジタとパリ 1913-1931

会期:2013/04/20~2013/06/23

静岡市美術館[静岡県]

静岡市美術館「レオナール・フジタとパリ1913-1931」展を見る。近年、彼の戦争画が再評価されているが、この企画では、いわゆる乳白色のスタイル以前の、パリ渡航前や渡航後のデビュー時など、藤田の初期作品を紹介する。古今東西のさまざまなスタイルを器用に吸収し、ミックスし、異国でどうアピールするかを計算しており、なかなか戦略的だと思う。実際、彼がルーブルでエジプト美術を研究したり、同時代のアーティストのさまざまな手法をパロディ的に再現するドローイングを描いていたことも紹介されていた。

2013/06/16(日)(五十嵐太郎)

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Waiting for Something

会期:2013/06/15~2013/06/16

舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」[静岡県]

静岡の舞台芸術公園にて、中野成樹が演出した「Waiting for Something」を観劇する。ベケットの『ゴドーを待ちながら』を踏まえたものだ。2年も(!)携帯電話の充電を待ちながら、日本語と韓国語(そして英語)のディスコミュニケーションによって、日本人の男と韓国人の女の物語が続く。そこに字幕と通訳も介入し、複雑になる。彼の演劇は、そもそも翻訳をテーマにしていたが、「Waiting for Something」は異言語間、あるいは同じ言語間の伝わらなさを作品としている。ゆえに、日本人/韓国人がみるか、あるいは両言語ともわかる/わからない人がみるかによっても、違うものに感じられるだろう。

2013/06/16(日)(五十嵐太郎)

中村好文 展 小屋においでよ!

会期:2013/04/17~2013/06/22

TOTOギャラリー・間[東京都]

ギャラリー間の中村好文「小屋においでよ!」展を見る。彼が影響を受けた古今東西の7つの小屋を紹介する第一セクション、中庭に実際につくられた小屋、そして上階は彼が手がけた小屋、あるいは小屋的なものの実践によって構成されている。いわゆる前衛性や目立つ派手な造形はないが、本人が好きなことがストレートに出ており、好感がもてる内容だった。テレビでも紹介されていたせいか、普段と違う多くの客層も訪れていた。

2013/06/13(木)(五十嵐太郎)

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