artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
ゴッホ展 空白のパリ時代を追う
会期:2013/05/26~2013/07/15
宮城県美術館[宮城県]
宮城県美術館のゴッホ展へ。あまり知られていないが、作風の転換上は重要だった空白のパリ時代とされる作品を、最新の研究成果をもとに紹介する切り口が目新しい。この頃、彼は描く対象をどうするのかという題材の選択から、さまざまな絵画形式の実験という近代的な方法論に移行していく。また常設で特集展示された菅野聖子がよかった。仙台生まれで具体に参加した画家である。手描きによるクールな幾何学絵画がとてもカッコいい。
2013/07/05(金)(五十嵐太郎)
トリエンナーレスクール2013年度 藤村龍至「列島改造論2.0とナゴヤ・ソーシャルプローブ・プロジェクト構想」
会期:2013/06/29
名古屋市美術館 2階 講堂[愛知県]
名古屋市美術館のトリエンナーレ・スクールにて、藤村龍至がレクチャーを行なう。前半は列島改造論2.0で、会場の美術館を設計した黒川紀章も、若かりしころはこんな感じだったのかと思う。後半はデザインの底上げを行なうワークショップ形式の展開について。履歴をつけて、改良を重ねる方法論は、超線形→CITY2.0→鶴ヶ島という一連の進化そのものとも重なりあう。また超線形プロセス論では、設計者サイドの底上げを行なっていた藤村が、最近のプロジェクトでは、ユーザー、すなわち一般市民側の底上げも試みていたことがよくわかる。またトリエンナーレで行なう、あいちプロジェクトが披露され、道州制や中京都の構想を踏まえ、現在の県庁と市庁舎を博物館に変え、その向い側にそれぞれの新しい庁舎をつくる計画を期間中、来場者や学生を巻き込みながら、進めていく。
2013/06/29(土)(五十嵐太郎)
studio velocity《瞬間をとじ込める椅子》(せんだいスクール・オブ・デザイン CiR)
[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザインのレジデンス枠で、スタジオ・ヴェロシティが仙台で採取した植物をアクリルで固める椅子を制作している。倉俣史朗を想起させるが、こちらは造花の薔薇ではなく、生きた野草であり、アクリルは椅子の座面のみだ。これはあいちトリエンナーレ2013の岡崎会場において、彼らが真白に塗っているシビコという百貨店の屋上にて、風でそよぐ無数の細い糸のインスタレーションとともに設置される。
2013/06/27(木)(五十嵐太郎)
《松坂屋》
[東京都]
いったん営業終了となる銀座の松坂屋を訪れた。戦後のデザインは、アントニン・レーモンドが関わっていたが、建物の背後など、一部にまだ少しその名残がある。館内には、百貨店の歴史展示や、昔ここで開催した美術展のカタログを紹介するコーナーも設けられていたが、セールで大勢がごった返す状況において誰も気にしていない。これは残念だ。また松坂屋の裏側も歩いてみると、人知れず、けっこう良質の渋ビルが幾つか発見できる。
2013/06/23(日)(五十嵐太郎)
成瀬・猪熊建築設計事務所《LT城西》(2013)
[愛知県]
成瀬・猪熊建築設計事務所が名古屋でオープンハウスをやっており、訪問した。考えてみると、リノベーションではなく、新築のシェアハウスという物件は、意外にあまり見たことがない。集合住宅とは違い、13人が共同して暮らす大きな家という感じだった。コストを抑えるために、木造の合理的なグリッドの柱割だが、各部屋にも天井高や眺めなどの違いを与えており、また明るく開放的な共有スペースと個室のメリハリが効いている。
2013/06/22(土)(五十嵐太郎)