artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
鉄川与助《今村カトリック教会》(1913)
[福岡県]
久留米の隣町、《今村カトリック教会》が素晴らしい建築だった。前々から大工の鉄川与助の手がけた教会を見たいと思っていたが、初めて実現した。田園風景のなかで想像以上に大きい教会がたっており、驚かされた。ちょうど100年前の竣工なのに、使い手に愛される宗教建築だからなのか、保存状態がよく、いまでも瑞々しい。デザインが巧いとか、そういうのではなく、気迫というか情熱を感じる建築である。
2013/08/23(金)(五十嵐太郎)
特別展「山岡+石橋コレクションでみる 洋画家たちの明治」
会期:2013/06/22~2013/09/01
石橋美術館 本館・別館[福岡県]
かつてはピロティ形式の近代建築だったが、いまは落ち着いた外観にリノベーションされた石橋美術館の「洋画家たちの明治」展は、山岡と石橋コレクションを軸に構成したもの。地元ゆかりの青木繁らも取り上げつつ、教育、西洋留学、展覧会制度など、8つのテーマから、新しい画法の受入れに努力した明治期の絵画を紹介する。それぞれの作家の興味深いエピソードもあわせて楽しめる内容だった。
2013/08/23(金)(五十嵐太郎)
久留米の建築
[福岡県]
久留米へ。ここではホールや庁舎など、地元出身の菊竹清訓ほかの建築めぐりを行なう。また、ここを拠点に企業を発展させた石橋正二郎関係の近代建物がよく残り、さらに文化センターが市民にも親しまれていたことを知る。ちなみに、ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館や国立近代美術館も、石橋氏の寄付によって建設されたものだ。こうしたアート関係の建築支援は、いまだとベネッセを思い出すが、これは国レベルの貢献だ。
写真上から、《石橋文化センター》、《久留米市庁舎》
2013/08/23(金)(五十嵐太郎)
あいちトリエンナーレ2013オープンアーキテクチャー
会期:2013/08/21
愛知産業大学 言語・情報教育センター[愛知県]
岡崎へ。スタジオ・ヴェロシティの愛知産業大学言語・情報共育センターにて、オープンアーキテクチャーが催された。建築家からは細かい設計のプロセスを、愛知産業大学学長・小川英明さんはこの施設の背景や、どう使うか、筆者はトリエンナーレとの関係を語る。オープンアーキテクチャーの企画でよかったのは、名古屋音楽大学のサクソフォーンアンサンブルが演奏したこと。参加者は椅子をもって内外を移動しながら、好きな場所に座る。その結果、愛知作業大学言語・情報共育センターの公園のような空間というコンセプトが明快にあらわれながら、参加者が音楽も楽しむことができた。
その後、シビコ屋上のスタジオ・ヴェロシティによる頭上に白い糸をはりめぐらせたインスタレーションに立ち寄る。時間帯によって全然体験が異なる作品だが、初めて夕方に訪れた。真白に塗られた屋上のあまりの反射光ゆえに、サングラスをかけても5分といられない真昼と違い、長時間の散策が可能だ。前日はビートたけしがNHKの番組収録で訪れ、ヴェロシティと対談し、この空間をいたく気に入ったという。
2013/08/21(水)(五十嵐太郎)
パシフィック・リム
会期:2013/08/09
『パシフィック・リム』を見たが凄い。日本の怪獣映画とSFアニメの歴史的遺産をアメリカが実写化している。これは日本映画の予算だとできないだろうが、勝手なアメリカナイズでなく、もとの戦後日本のサブカルチャー文化へのリスペクトも感じる。ここまで監督が好きなことをやりきったら、細かいケチをつけるのは野暮というもの。ただ、爬虫類のようになったハリウッド版のゴジラでもそう思ったのだが、「パシフィック・リム」も、怪獣の造形が着ぐるみ的なものから離れていくのは仕方ないにしても、日本とはだいぶ異なる(エヴァにおける使徒のデザインのようなエッジもない)。日本とアメリカで、どうも怪獣のイメージが違うことは興味深い。
2013/08/20(火)(五十嵐太郎)