artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

新井淳一の布 伝統と創生

会期:2013/01/12~2013/03/24

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

東京オペラシティアートギャラリーの「新井淳一の布 伝統と創生」展へ。テキスタイルのデザインによって、被膜、伝統、素材と技術などのテーマを具体的に示す好企画である。理論と実践の対応を提示する1/1の実物をずらりと配置したり、テキスタイルによる空間のインスタレーションは、建築的にも面白い。それを空間化した会場の構成は、建築家の田根剛である。同時開催のproject Nでは、阿部未奈子の記憶と解体を伴う風景画も興味深い。

2013/02/27(水)(五十嵐太郎)

エル・グレコ展

会期:2013/01/19~2013/04/07

東京都美術館 企画展示室[東京都]

東京都美術館のエル・グレコ展を見る。誰が見てもすぐわかる有名なグレコのスタイルになる前の初期の絵画作品が興味深い。彼ですら、最初はいわゆる「グレコ」じゃないのだから、卒計くらいで個性を求めるのは難しいかもしれない。またウィトルウィウスの建築書への書き込みや、教会で建築と一体的に絵画を構想したという展示が興味深い。トレドを訪れたのはもう20年前である。学部の頃、スペイン美術史を聴講したのが懐かしい。

2013/02/26(火)(五十嵐太郎)

so long! The Movie

大林宣彦監督によるAKB48の『so long! The Movie』の映像を見た。AKB48の楽曲は保守的なウェルメイドだが、彼女らをめぐるシステムは破壊的な前衛である。この映像は明らかに後者だ。3.11以後のもっとも重要な作品のひとつ、大林の映画『この空の花ー長岡花火物語』の続編と言うべき内容であり、もっと福島に寄りそうものだ。わざとらしい表現や演出などの手法もほぼ踏襲している。この文脈を前提とさせられるファンにとっては嫌いな作品だろうが、大林にこの「映画」をつくることを許した度量がすごい。

2013/02/26(火)(五十嵐太郎)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2012年度秋学期成果発表会|記念講演 (講師:照明デザイナー面出薫)

会期:2013/02/24

東北大学工学研究科中央棟大講義室(青葉山キャンパスセンタースクエア)[宮城県]

SSD成果発表会にて、照明デザイナーの面出薫のレクチャーが開催された。本領発揮は日没後だけに、これだけ夜景が続くスライドは珍しい(逆に言うと、建築のスライドは陰影がくっきりする昼の写真が多いことに改めて気づく)。こうして通してみると、せんだいメディアテーク、京都駅、茅野市民館、東京国際フォーラム、東京駅、京都迎賓館、長崎平和祈念館など、あれもこれも面出の仕事である。まさに名建築の夜の顔をつくったデザイナーだ。いまやシンガポールや香港にも拠点を置き、海外でも活躍している。

2013/02/24(日)(五十嵐太郎)

第16回文化庁メディア芸術祭

会期:2013/02/13~2013/02/24

国立新美術館[東京都]

国立新美術館の文化庁メディア芸術祭はものすごい混みよう。とてもゆっくり見るという感じではなかった。アート部門新人賞のQuayolaによる作品《Strata #4》が印象に残る。名画をデジタル処理して、ポリゴンの集積に変えていくもの。またマンガ部門の大賞として、ベルギーの建築的な漫画の巨匠フランソワ・スクイテンも展示されていた。相変わらず、驚くべき精緻なドローイングによる、きわめて芸術性が高い作品である。

写真=Quayola《Strata #4》

2013/02/23(土)(五十嵐太郎)