artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
二川幸夫「日本の民家 1955年」展
会期:2013/01/12~2013/03/24
パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]
・パナソニック汐留ミュージアムの二川幸夫「日本の民家 1955年」展へ。会場構成は藤本壮介によるもの。彼らしい離散配置された写真の森をさまよい歩く。日本各地の民家の撮影は、二川の原点となる仕事だが、現在から見ると、解村される前のぎりぎりのタイミングで記録された生きる民家と言える。土着的な地域にねざした民家は、どれも強い個性をもつが、とくに富山県上平村・越中桂の民家がすさまじい存在感を放っていた。
2013/01/18(金)(五十嵐太郎)
「クリムト 黄金の騎士をめぐる物語」展
会期:2012/12/21~2013/02/11
愛知県美術館[愛知県]
愛知県立美術館の「クリムト 黄金の騎士をめぐる物語」展は、重要なコレクション作品に焦点をあてるが、クリムトの絵画そのものはさほど多くなく、むしろその文化的、あるいは時代の背景をていねいに紹介する。個人的には、彼らの雑誌『ヴェル・サクルム』の各号、ホフマンやモーザーによる家具のデザインなど、周囲の状況に関心があるので、興味深いものだった。当時は議論を巻き起こしても、いまや歴史化されているのを見ると、グループを結成し、自ら雑誌をつくり、展覧会を行なうことの重要性を改めて感じる。それにしても、象徴主義から影響を受け、独自の世界観を生んだクリムト的なものは、ひとつの発明であり、その後のサブカルチャーにも充分浸透していた要素だと改めて思う。
2013/01/16(水)(五十嵐太郎)
会田誠 展
会期:2012/11/17~2013/03/31
森美術館[東京都]
森美術館の会田誠展を訪れる。多くの作品はすでに見ていたが、初期のもので知らないものが幾つかあって、それが収穫だった。こうしたまとめて作品を見ると、パロディ+笑い+高尚なものへのルサンチマンが一貫している。ただ、いまやネタがベタになる時代だ。批評的に機能していた会田の作品は、社会が変わったことで、その受容も変わったのではないかと思う。例えば、会田誠の戦争画RETURNSシリーズは密度が高い作品だが、当時の左翼的知識人への違和感が制作の背景にあったという。同じ時代を生きていたものとして会田の感じていた雰囲気はよくわかる。しかし、いまの日本社会は左翼的言説が消滅し、まるで違う位相だ。「天才でごめんなさい」の展覧会タイトルも、観客にはベタに受けとられるのかもしれない。ちなみに、筆者が好きな作品は、新宿御苑改造計画である。
2013/01/13(日)(五十嵐太郎)
中央アーキ「神宮前ビルディング」
[東京都]
中央アーキによる神宮前ビルディングを見学した。箱をズラしながら積層するが、箱の上下に隙間をつくり、天井が全面ガラス、その真上の箱底は鏡面仕上げで、ここに光と風景が入り込む。箱と箱のあいだのスキマの空間の美しいことに感心した。現代美術のインスタレーションのようだ。上下移動は屋外階段のみで、天候はあいにくの雪だったが、逆に趣きのあるシーンを目撃した。鏡に映ると、雪が上に向かって降っているのだ。
2013/01/13(日)(五十嵐太郎)
夏の家 MOMAT Pavirion designed and built by Studio Munbai
会期:2012/08/26~2013/01/14
東京国立近代美術館[東京都]
遅ればせながら、インドの建築家、スタジオ・ムンバイが制作した夏の家も最終日に見る。東京国立近代美術館の前に、さまざまなアクティビティを誘発する3つの小さな東屋が並ぶ。彼ららしい手づくり感が漂う構築物である。しかし、雪が降りだす。当然、誰もここで過ごそうという人はいない。夏の家はやはり夏に見ておくべきだったと反省する。
2013/01/13(日)(五十嵐太郎)