artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
はじめての美術 絵本原画の世界2013
会期:2013/04/06~2013/05/12
宮城県美術館[宮城県]
宮城県美「はじめての美術 絵本原画の世界」展へ。なるほど、多くのアーティストは絵本も描いており、興味深い切り口。70年頃から増えている。絵から発想された物語もある。また物語を知らない原画を見ながら、物語を作ってみるのも面白そう。林明子の「はじめてのおつかい」は、空間表現も秀逸。
2013/04/17(水)(五十嵐太郎)
オカザえもん
新聞社からオカザえもんのコメントを依頼される。ゆるキャラは「デザイン」だが、オカザえもんは「アート」だ。デザインは一定の技術で、親しみやすく、わかりやすく、かわいいことを狙うが、アートは機能を満たすものではない。また、そもそもゆるキャラとは何か。人を立ち止まらせ、考えさせる。あるいは、不安にさせるのは、デザインではなく、アートだからであろう(実際、オカザえもんを見て泣き出す子どももいるという)。なお、これを生みだした斉と公平太は、アーツチャレンジ第二回の公募で、僕が審査員だったとき強力に推したアーティストである。二度目の挑戦で「愛知」にひっかけて、LOVEちくんを出し、「二回目のイベントでないとできないものがある。再チャレンジだ」の書き出しで講評を書いた。それゆえ、後のあいちトリエンナーレ2010の参加やオカザえもんのブレイクは嬉しい。ちなみに、斉と公平太さんが前回のあいちトリエンナーレ2010でつくったキャラ、長者町くんの漫画は、以下のFacebookから読むことができる(Amazonで漫画を購入することも可能)。
http://www.facebook.com/chojamachikun
2013/04/17(水)(五十嵐太郎)
Playback
あいちトリエンナーレ2013の映像プログラムで参加する三宅唱監督の映画『playback』を見る。現在と過去を行き交う物語なのだが、過去のシーンでは、特別なメイクをすることなく、四十手前の俳優がそのまま学生服を着るために、やがて時間軸がこんがらがってくる。こういった時間の移動もさることながら、空間の移動シーンが素晴らしい。そして構築的な画面のつくり方。震災でマンホールが隆起し、破壊されたままの水戸の道路をスケートボードで越えていくシーンが印象的だった。
2013/04/15(月)(五十嵐太郎)
市民公開講座「金沢学」第1回「建築文化からみた金沢の近代化」
会期:2013/04/13
北國新聞社 20階ホール[石川県]
北國新聞社にて「近代化支えた偉人学ぶ」市民公開講座「金沢学」の第一回として「建築文化からみた金沢の近代化」で基調講演を行ない、その後、水野一郎さん、川上光彦さん 、小倉正人さんらとパネル討議。実は筆者にとって金沢での講演はやりにくい。小中高と12年も暮らしながら、建築を学ぶ前で何も見ていなかった、ぼんくらの時代を思い出すからだ。いまなら初めての都市でも、どう見ればいいかすぐにわかるが、金沢は初見の関係になることを許してくれない。が、開き直って、講演ではいわば外国人として金沢を語ることにした。金沢生まれの谷口吉郎論をメインとしつつ、何にも似ていない尾山神社神門、明治時代につくられ、いまもよく残る近代の教育と軍関係の施設などを紹介する。また谷口吉郎と息子・吉生の共作、玉川図書館(これは近代と現代をつなぐリノベーションでもある)から、金沢に登場した吉生の鈴木大拙館、ニューヨークのMoMAの増改築へ、そしてSANAAの金沢21世紀美術館からルーブル美術館のランス別館へ、の二系統を提示し、世界水準の建築につながっていることを論じた。ちなみに、金沢出身では、市長にまでなった片岡安もいる。彼が都市計画や法規、実業界に影響をもったのに対し、谷口吉郎は機械(工場を研究したり、大学院では佐野利器に学ぶ)と美(記念碑、美術館、九谷焼の窯元出身、伊東忠太にも師事)の間を往復しつつ、いずれも純粋ゆえに魅せられ、法規ではなく、生活美の延長による街並みを唱えた。筆者の立場も後者側に近い。
写真:上=《尾山神社》、下=《玉川図書館》
2013/04/13(火)(五十嵐太郎)
目黒天空庭園
[東京都]
目黒区みどりと公園課の案内で、池尻大橋の天空公園を訪れる。ここは首都高の巨大ジャンクションだが、クルマが見えないようにコンクリートの壁でふさぎ、コロセウムのような外観をもつ。その中心の地上にスポーツ場、また屋上を弧を描きながら傾斜するダイナミックな公園にしたもの。さらに隣接する高層ビルやマンションと接続する。細部のデザイン、あるいはランドスケープは、高架の路線跡を緑道としたニューヨークのハイラインに比べて劣るものの、プログラムのユニークさが圧倒的。おそらく世界初だろう。徹底的にインフラを活用する超巨大版のメイド・イン・トーキョーとも言える。
2013/04/09(火)(五十嵐太郎)