artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
東京オリンピック1964 デザインプロジェクト
会期:2013/02/13~2013/05/26
東京国立近代美術館 ギャラリー4[東京都]
ベーコン展と同時に開催されていた東京国立近代美術館の「東京オリンピック1964デザインプロジェクト」展も面白い。昨年、40年分の六耀社のデザイン年鑑をめくりながら、初期の頃にオリンピックや大阪万博などがデザインのシステムを向上させるきっかけになったと座談会などで述べられていたが、まさにそれを資料で見せてくれる展示だった。
2013/03/31(日)(五十嵐太郎)
フランシス・ベーコン展
会期:2013/03/08~2013/05/26
東京国立近代美術館[東京都]
東京国立近代美術館のベーコン展は、まさに実物を見るべき絵だった。多くの絵画が共通したサイズやプロポーション、あるいは額縁をもち、また作家の意向によって鑑賞者と距離をとるべくガラスをはめているからだ。こうした感覚は書籍やコンピュータではわからない。ベーコンの作品は、一点透視の空間とアクソノメトリックの混在(彼はインテリアデザインの仕事もしていた)、違う画法の共存、異なる身体の接合が指摘できるだろう。独特の色味のなかで、異世界のレイヤーが重なり、ときには衝突する。またデッサンが巧くないがゆえの写真のコラージュ的な技法が、平坦なキャンバスに異なる空間を出現させる。今回、土方巽とウイリアム・フォーサイスのパフォーマンス映像が参考作品としても紹介されていた。前者はどろどろとした情念を身体化し、後者はペーター・ヴェルツと組んで、ベーコンの手法を理知的に分析し、絶筆の痕跡をトレースするもの。なお、ヴェルツ+フォーサイスは、サミュエル・ベケットをモチーフにした作品で、あいちトリエンナーレに参加する。ところで、ミラン・クンデラのベーコン論は、「乱暴な手つき」で埋もれたモデルの自我をむきだしにすると指摘しつつ(漫画の『ホムンクルス』を思い出した)、彼の空想画廊の中でベーコンとベケットは一組のカップルになっていたという。いずれの人物もアイルランド生まれであり、ともにヴェルツ+フォーサイスが参照しているのは興味深い。
2013/03/31(日)(五十嵐太郎)
東日本大震災復興支援「つくることが生きること」東京展
会期:2013/03/09~2013/03/31
アーツ千代田 3331 メインギャラリーA, C, D[東京都]
アーツ千代田3331にて、昨年に引き続き、開催された東日本大震災復興支援「つくることが生きること」東京展を見る。最初の導入部では、リアスアーク美術館による明治三陸沖津波の報道画が出品されていた。そのほかには、宮本隆司、畠山直哉らの写真、阪神・淡路大震災のタイムラインマッピング、漂流物でかわいいオブジェをつくるワタノハスマイルなど、東日本大震災に限定せず、さまざまな展示が集まっている。その後、トークイベント「観光資源のネットワークが描く復興のかたち」のモデレータを務める。アーキエイドからは門脇耕三さん、石巻2.0からは西田司さんが、牡鹿半島における小さな拠点をネットワーク的につなぐ新しい観光の可能性を報告し、大西麻貴さんは気仙沼などの風景をつくるプロジェクトについて紹介した。おそらく、最終的に手垢のついた「観光」という言葉に代わる新しい概念をつむいでいくことが重要ではないかと思われた。
2013/03/30(土)(五十嵐太郎)
7人の建築学生展─卒業設計まで考えたこと─
会期:2013/03/22~2013/03/31
Herman Miller ergokiosk 3F Briefing Room[宮城県]
ハーマンミラーエルゴキオスク仙台店にて、「7人の建築学生展─卒業設計まで考えたこと─」を見る。東北大の学生によるもの。学校からのお金がなくても、自前で開催したことはよい試みだ。が、少なくともタイトルに記された肝心のはずの「卒業設計まで考えたこと」のキャプションが読みにくい。字は小さいし、パネルで隠れていたりが、残念である。いかに作品を見せるかという展示の方法にも、もっとこだわってほしい。
2013/03/28(木)(五十嵐太郎)
円山応挙 展─江戸時代絵画 真の実力者─
会期:2013/03/01~2013/04/14
愛知県美術館[愛知県]
愛知県立美術館にて、円山応挙展を見る。好き嫌いが分かれる作家だ。まとめて全体の作品を見ると、同一の人物と思えないほど、さまざまなスタイルを駆使し、器用な人だと思う。建築系からは、特に西洋からの眼鏡絵の手法の導入(その事例として、細長く、透視図法を強調できる三十三間堂を選ぶのもうなずける)、ジグザグに置かれることを意識した屏風絵の立体的な表現、そして会場に再現された障壁画と空間の関係が興味深い。
2013/03/27(水)(五十嵐太郎)