artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

GLOBAL ENDS towards the beginning

会期:2010/11/19~2011/02/26

ギャラリー・間[東京都]

ギャラリー間の25周年記念として、「世界」を測定するシブい展覧会が企画された。通常は建築家にお任せの個展だが、今回はめずらしくゲスト・キュレーターが設定され、ケン・タダシ・オオシマが、ポルトガル、オーストラリア、シンガポール、日本、アメリカ、チリ、スペインから7組の建築家を選んでいる。東京からは、石上純也が建設中の住宅模型を出品した。彼をのぞいて、日本では知名度が高いとはいえないが、世界の中心においてグローバリズムにのったアイコン建築を手がけるスターアーキテクトではなく、世界の果てにおいて、独自の設計を試みる建築家たちが一同に介した。ともあれ、筆者が15周年記念の「空間から状況へ」展に関わってから、もう10年である。数少ない建築専門の展示施設であるギャラリー間が、四半世紀も継続したことに敬意を表したい。

2010/12/16(木)(五十嵐太郎)

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吉村靖孝「CCハウス」展~建築のクリエイティブ・コモンズ~

会期:2010/11/29~2011/12/17

オリエアートギャラリー[東京都]

「CCハウス」展のCCとは、「クリエイティブ・コモンズ」のこと。これは現代において誰かがやるべきテーマである。確かに建築の著作権は長く認められていなかった。しかし、がちがちに権利を主張するのではなく、ゆるやかに建築の著作権について考えるきっかけをわれわれに与えてくれる好企画である。吉村は、プロトタイプの図面をCCの署名付きで販売し、敷地や条件に合わせた改変も認めていく。壁のトレペ、複数の模型、床に描いた平面など、お金をかけずに、イメージをちゃんと伝えている展示もよかった。

2010/12/16(木)(五十嵐太郎)

PETER COOK: FROM ARCHIGRAM TO CRAB

会期:2010/12/15~2011/12/28

INAX GINZA 7F[東京都]

1960年代の建築系アヴァンギャルド、アーキグラムに関しては、大々的な回顧展がすでに巡回しており、日本でも2005年に水戸芸術館で展覧会が開催された。今回は小規模の会場であり、展示は過去作よりも、グラーツ美術館以降の近作が中心になっている。AAスクールの卒業生コネクションがあるのかもしれないが、タイや台湾のほか、ウィーン経済大学法学部棟のプロジェクトが紹介されていた。年老いてもなお、相変わらずの元気さとSF的な未来志向に関心しつつも、立体の展示が少なかったのは残念である。いたずら書きもなかったわけではないが、ガレージ・バンド的な初心に戻って、もっとアナーキーな展示もありえたかもしれない。

2010/12/16(木)(五十嵐太郎)

ゴッホ展──こうして私はゴッホになった

会期:2010/10/01~2011/12/20

国立新美術館[東京都]

「こうして私はゴッホになった」のサブタイトルどおり、同時代の背景を紹介しつつ、いかにして画家のゴッホは誕生したのかを紹介する展覧会。天才と言えども、まったく100%のオリジナルではなく、さまざまなものから影響を受けている。とりわけ、インスタレーションやCGによる、ゴーギャンと共同生活をした黄色い家の再現展示が興味深い。2階の部屋は有名な絵画《アルルの寝室》にもなっており、意図的に室内空間を歪めて描いたものだと思っていたが、再現された平面図を見ると、もともと部屋が不整形だったことが判明したからだ。

2010/12/16(木)(五十嵐太郎)

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金沢建築訪問vol.1

会期:2010/12/11

北國銀行武蔵ヶ丘辻支店(金沢アートグミ)、中島商店、中村卓夫家住宅・アトリエ[石川県]

NPO法人の金沢アートグミが企画した「金沢建築訪問 vol.1」のエスコート役をつとめた。これはクリエイティブ・ツーリズムというプログラムの一貫として行なわれたが、まちあるきを通じて、さまざまな発見をしていく、新しいタイプのツーリズムを模索するものである。実際、筆者も、建物の解説役というよりも(解説は坂本英之先生が担当)、参加者とともに、建物を味わうプロセスを共有し、ときには代表で質問することなどが求められた。ツアーは、アートグミが拠点を置く、村野藤吾設計による、北国銀行武蔵ヶ辻支店(1932)から始まった。続いて、村野藤吾による同年の中島商店。そして内藤廣による中村卓夫邸とアトリエを訪問し、陶芸家の施主から、ていねいな案内をしていただいた。最後はオプションとして主計町に向かい、むとう設計が手がけた、床上浸水し、空き屋となっていたお茶家のリノベーション「土家」を見る。むろん、普段は入れない室内も見学できたことは重要だが、物件の組み合わせがおもしろい。いずれも伝統と現代を考えさせる空間であり、かつて居住して知っているつもりの、金沢という街がもつ歴史の奥深さを、さらに新しい角度から発見するのによい機会となった。

2010/12/11(土)(五十嵐太郎)