artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」展

会期:2011/02/02~2011/05/08

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

ポストモダンのデザインによって世界を驚かせたエットレ・ソットサスのメンフィス・プロジェクトに倉俣史朗が参加した1981年を起点とし、両者の親交と作品をたどる展覧会。もっとも、実質的には倉俣を再評価するための企画と言ってよいだろう。倉俣の《トワイライト・タイム》(1985年)の脚は、伊東豊雄のせんだいメディアテークのチューブを予見していたなど、いかに時代を先駆けていたかを検証できる。彼の軽さや透明感、あるいは無重力への志向は、直接的には妹島和世、隔世遺伝的には石上純也や中村竜治を含むゼロ年代の建築家にまで影響を与えていたと考えられるではないか。

2011/02/27(日)(五十嵐太郎)

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G-TOKYO 2011

会期:2011/02/19~2011/02/27

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー 52F)[東京都]

今年で二年目を迎える、有名ギャラリーによる森タワーでの集合展示。タカイシイギャラリーのマリオ・ガルシアトレスによるセザンヌの絵《浴女》の数奇な運命をたどる作品、山本現代のエドガー・マーティンズによる、この世のものとは思えないような街の建築写真(セットで組んだもののようにも見える)が興味深い。そしてボンベイサファイアのバーラウンジにて、建築家の中村拓志がデザインした《幻影のマティーニ》も印象的だった。これはコップのなかのマドラーが回転し、水の渦巻きを起すことにより、逆円錐ヴォイドを生み、虚構のカクテル・グラスを出現させるという仕掛けである。

2011/02/27(日)(五十嵐太郎)

colors lecture series 一番町建築夜話 ikken’ya vol.2 山梨和彦

会期:2011/02/25

東北工業大学 一番町ロビー4Fホール[宮城県]

まず最初に15年におよぶ東北工業大学の学生団体colorsの活動紹介を行ない、その後に日建設計の山梨知彦の講演が続く。木材会館やホキ美術館を案内していただいたことはあったが、レクチャーを聞いたのは初めて。彼が追求するのは、熱、音、光などの諸要素をすべてヴィジュアル化し、設計の手続きに組み込む、超視覚化主義だ。それはコンピュータの導入によって、変わった形態(フランク・ゲーリーやザハ・ハディドなど)の構造を実現する以外の可能性を大きく拡張する試みでもある。日建設計では、泉ガーデン、京都迎賓館、大阪弁護士会館、京都の東本願寺修復など、山梨以外にも意欲的なプロジェクトを展開しているが、とりわけ山梨のチームは現代的な感覚をもつ。

2011/02/25(金)(五十嵐太郎)

軍艦マンション再出航イベント[GUNKAN crossimg]

会期:2011/02/22~2011/02/27

軍艦マンション[東京都]

異形の造形から通称「軍艦マンション」と呼ばれる、渡邊洋治の第三スカイビル/ニュースカイビル(1970年)がリノベーションを経て、再度使われることになった。近年、こうしたイベントは増えているが、
展示という名目で、普段は入れなかったであろう地下、3~5階、屋上を見学することができたので、アートに感謝したい。尋常ではないプランもさることながら、屋上の艦橋を模した給水塔を間近に見ることができ、大いに感銘を受けた。船を建築のメタファーにすることは、横浜郵船歴史博物館において開催中の「船→建築」展が焦点を当てているように、モダニズムの時代から試みられてきたことだが、渡邊の建築もその系譜に位置づけられる。ピエール・パトゥによるパリの船=集合住宅は有名だが、こちらは14階建てだ。ハンス・ホラインは航空母艦都市を空想したが、軍艦マンションは実現されたプロジェクトである。世界に誇るべき、船=建築だ。

2011/02/22(火)(五十嵐太郎)

伊東豊雄事務所設立40周年創立記念パーティ

座・高円寺[東京都]

驚くべきイベントだった。冒頭、伊東豊雄による北島三郎の熱唱に始まり、途中はスタッフによるKARAのダンス、ラストはこれまでの伊東事務所の所員がみなステージに上がり、歌とダンスで大団円のフィナーレを迎える。しかし、メインは三部構成のシンポジウムだった。
第一部は藤森照信が聞き手となって、磯崎新と石山修武の話を引きだしながら、伊東の70年代~80年代をふりかえる。モダニズムに反逆し、なぜ建築が閉じたのか、という質問からスタートし、最後に磯崎は「消費の海に浸らずして新しい建築はない」の論文で、伊東はいまの伊東になったと述べる。
第二部は、転換となる作品、せんだいメディアテークをめぐって。大西若人が現仙台市長の奥山恵美子に、当時の行政サイドの苦労話をきく。続いて、塚本由晴が原広司に、情報の建築について意見をうかがう。第三部は、伊東自身が中沢新一をゲストに迎え、これからの建築について討議を行う。今後、伊東は建築塾を通じて、若い人と新しい世紀の空間を考えると表明したことが印象的だった。

2011/02/21(月)(五十嵐太郎)