artscapeレビュー

金沢建築訪問vol.1

2011年01月15日号

会期:2010/12/11

北國銀行武蔵ヶ丘辻支店(金沢アートグミ)、中島商店、中村卓夫家住宅・アトリエ[石川県]

NPO法人の金沢アートグミが企画した「金沢建築訪問 vol.1」のエスコート役をつとめた。これはクリエイティブ・ツーリズムというプログラムの一貫として行なわれたが、まちあるきを通じて、さまざまな発見をしていく、新しいタイプのツーリズムを模索するものである。実際、筆者も、建物の解説役というよりも(解説は坂本英之先生が担当)、参加者とともに、建物を味わうプロセスを共有し、ときには代表で質問することなどが求められた。ツアーは、アートグミが拠点を置く、村野藤吾設計による、北国銀行武蔵ヶ辻支店(1932)から始まった。続いて、村野藤吾による同年の中島商店。そして内藤廣による中村卓夫邸とアトリエを訪問し、陶芸家の施主から、ていねいな案内をしていただいた。最後はオプションとして主計町に向かい、むとう設計が手がけた、床上浸水し、空き屋となっていたお茶家のリノベーション「土家」を見る。むろん、普段は入れない室内も見学できたことは重要だが、物件の組み合わせがおもしろい。いずれも伝統と現代を考えさせる空間であり、かつて居住して知っているつもりの、金沢という街がもつ歴史の奥深さを、さらに新しい角度から発見するのによい機会となった。

2010/12/11(土)(五十嵐太郎)

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