artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

画像建築展

会期:2011/01/19

マキイマサルファインアーツ[東京都]

彦坂尚嘉が企画した画像建築展に、建築系ラジオのメンバーとともに出品者として参加した。たった一日の展覧会だったが、それではもったいない力作揃いだった。大西麻貴は模型とそれが実現された写真、北川啓介はライブで貼っていく新宿漫画喫茶の一週間漂流ドキュメント、南泰裕は3人の写真家による3つの住宅作品の写真、松田達は黄金神殿復元計画、そして筆者はコピー建築群による「it's a fake world」を展示した。建築家の高橋堅は自作と京都写真を展示、彦坂はサヴォア邸やファンズワース邸などのdub化され、引き伸された有名建築、糸崎公朗はフォトモ、そのほかにも中川晋介や栃原比比奈らアーティストも参加している。建築と写真をめぐって、さまざまな切り口が示され、会場ではシンポジウムも行なわれた。

2011/01/19(水)(五十嵐太郎)

ダンボールで再現した国宝茶室、如庵に入ってみよう

会期:2011/01/02~2011/01/16

ハウスクエア横浜 住まいの情報館 3Fライブラリー[神奈川県]

不慮の事故で亡くなった山田幸司の遺作というべきダンボール茶室が名古屋から移築されて、横浜で展示された。Yahoo!や各種の新聞、メディアなど、多くのマスメディアがとりあげたのは、「ダンボール」「国宝」「茶室」という3つのキーワードがキャッチーだったからだろう。ひたすらダンボールを積層させて空間をつくる手法は、3Dの立体スキャンのようなデジタル感覚だが、実際に解体の作業に立ち会い、モノに対するディテールのデザインもきわめてよく考えられていることを確認した。実はハウスクエア横浜の展示が終了後、廃棄される予定だったが、最終日に訪れたお茶関係のグループが引きとりたいと申し出て、厳しいスケジュールにもかかわらず、無事、部材は次の場所に搬出された。ポータブルな茶室ならではの生き残りだろう。次は、2月19日、20日の大場みすずが丘地区センター祭りで再び組み立てられる予定だ。

2011/01/16(日)(五十嵐太郎)

ホキ美術館開館記念特別展

会期:2010/11/03~2011/05/22

ホキ美術館(設計:日建設計)[千葉県]

ユニークな絵画コレクションをもつホキ美術館は、東京から決して近い距離ではないが、多くの来場者を集めていた。小さなビルバオ・グッゲンハイム美術館というべき、インパクトのある張り出した展示室と彫刻的な造形は、住宅街の横にあって目立っていた。このかたちは、まわりのカーブする道路も抱え込むように、くねるチューブの集合体としてヴォリュームを構成しており、コンテクスチュアリズム的な操作から導かれたものだ。外観だけではない。室内では、天井の銀河のように見えるLEDの小さな照明群、マグネットによる絵画の設置、音声ガイドのシステム、ガラスの袖壁で仕切られた真黒のコンペ・ルームなど、展示デザインにも新しい工夫が散見される。
ところで、ホキは、日本初の写実専門絵画の美術館というだけあって、いかにこうした作品が、いわゆる「現代アート」から疎外されているかが、改めてよくわかる内容だった。やはり、現代アートとの客層も違う。作品の抽象的なコンセプトではなく、誰にでも驚くことができる写実の技巧と、共感しやすい描かれたモチーフへの物語的な想像可能性によって、一般の観客を魅了している。また個別に見ていくと、森本草介や中山忠彦など、それぞれに異なる画風や世代の違いなども楽しむことができた。

2011/01/14(金)(五十嵐太郎)

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船→建築 ル・コルビュジエがめざしたもの

会期:2010/12/04~2011/04/03

日本郵船歴史博物館[神奈川県]

同館は船の博物館だが、これまでに前川国男、村野藤吾、中村順平、本野精吾らと客船デザインの関係を紹介したり、建築写真家の渡辺義雄をとりあげてきた。今回は、筆者が監修をつとめ、いよいよ本丸のル・コルビュジエから、近代における船と建築の類似性に切り込む。彼の主著『建築をめざして』の表紙も、実は建築ではなく、客船の写真だったように、建築家にとって客船は当時の最先端の機械のイメージであり、動く集合住宅だった。同展が指摘したほかにも、建築的なプロムナードの概念も、船内を散歩することから発想されたのではないか、など、さまざまな類似点が思い浮かぶ。日本の建築家では、最先端の客船ブレーメン号にのって感激した山田守とその作品への影響、岸田日出刀や板垣鷹穂らの著作も紹介している。
展示のラストは、もともとこの展覧会のきっかけになったプロジェクトだ。セーヌ川に係留された、ル・コルビュジエが船を改造した救世軍船上収容所の、遠藤秀平による仮設のシェルター計画である。ただし、現在、このプロジェクトはとまっている。同展の学芸員の海老名熱実とは建築系ラジオの収録も行った。

URL=http://architectural-radio.net/archives/110117-4599.html

2011/01/08(土)(五十嵐太郎)

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第19回〈現代日本の建築家〉展 GA JAPAN 2010

会期:2010/11/20~2011/01/23

GAギャラリー[東京都]

今回は、1930年代生まれの磯崎新から70年代生まれの藤本壮介まで、9組の日本人建築家の新作を紹介していたが、海外のプロジェクトが多いことが印象的だった。国内はわずか2つだけである。とくに韓国は3つ、中国は2つだ。狙ったわけではないだろうが、いかに日本に挑戦的な公共の仕事が減っているかを結果的に示していた。世界的に日本の建築家が高く評価されている一方、国内の仕事がないのは、なんとも皮肉である。

2011/01/04(火)(五十嵐太郎)

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