artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
松本マニコ個展 あたまの中の庭
会期:2012/04/04~2012/04/15
iTohen[大阪府]
複数のぬいぐるみ、人形、造花などを合体させて、可愛さとグロテスクさが同居する造形をつくり出している。アクリルボックス内に閉じた世界をつくり出すジオラマ型の作品もあった。マイク・ケリーや工藤哲巳を持ち出すまでもなく、この手の造形は決して目新しいものではない。しかし、この人の場合は下手に背伸びせず伸び伸びと制作に励んでいるところが気持ちいい。その素直さと、丁寧な仕上げに好感を持った。
2012/04/05(木)(小吹隆文)
田嶋悦子 個展 Flowers
会期:2012/03/31~2012/04/21
イムラアートギャラリー京都[京都府]
植物のような有機的フォルムの陶と、モールド・キャストによる半透明のガラスを組み合わせたオブジェで知られる田嶋悦子。本展でも植物を連想させる作品が出品されたが、オブジェを単体で見せるのではなく、花の群生を模したインスタレーションとして展示していたのが斬新だった。黄色い花のようなオブジェが床と壁面に集合して並ぶ様は、まるで春の花畑のよう。今年の春は気温がなかなか上がらず桜の開花が遅れたが、本作を見た人の心には一足早く春が訪れたに違いない。
2012/04/03(火)(小吹隆文)
津上みゆき展
会期:2012/04/03~2012/04/29
ギャラリーなかむら[京都府]
関西では久々の個展となった今回、彼女は現在制作中の新シリーズの一部を持ち込んだ。それは祖母が亡くなった日に出かけていた場所のスケッチを起点とするもので、毎月自分にとっての記念日に里山へ出かけ、そこで描いたスケッチをもとに作品を制作するのである。新シリーズは全13作品を予定しているが、本展ではすでに完成している6点を展覧。ほかにも大作絵画2点と大量の小品が持ち込まれた。実在する場所を描きながらも、情景と自身の感興が融合した境地を描き出す津上の絵画。その瑞々しい感性の表出を見て、久々に清々しい気持ちになった。
2012/04/03(火)(小吹隆文)
八木修平「アクタラノバ」
会期:2012/03/31~2012/05/05
児玉画廊[京都府]
マスキングテープを貼ってはドローイングすることを何度も繰り返し、動的な線が何重にも寸断しながら重なる目まぐるしい画面の絵画をつくり出す八木修平の絵画。彼のテーマは陶酔感をビジュアライズすることだが、そのきらびやかで幻惑的な色面は、螺鈿細工のようでもある。新作は、ストロークの勢いがより増しており、不透明色の採用、ペインティングナイフで上層を削ぎ落とすなど、幾つかの新しい試みも見られた。若くしてすでに自分のスタイルを持つ八木修平だが、これら新機軸の発展次第では今後がらりと作風を変える可能性も否定できない。
2012/04/03(火)(小吹隆文)
任田進一 屹立する白
会期:2012/03/27~2012/04/19
くちばしニュートロン[京都府]
以前の作品では、煙の塊が空中で静止しているような不思議な情景を写真に収めていた任田進一。本展の新作は乳白色の雲のようなものを捉えており、前作以上に複雑な表情を見せてくれる。気象衛星から捉えた大気の様子とでもいえばよいのだろうか。一体どのような手法を用いたのだろうか。謎解きが本意ではないことは承知だが、あまりにも神秘的な図像なので、どうしても制作法を知りたくなってしまう。
2012/03/28(水)(小吹隆文)