artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
森村誠 Daily Hope
会期:2012/07/13~2012/08/12
Gallery OUT of PLACE[奈良県]
英字新聞の紙面から、H、O、P、E以外の文字を修正液で塗りつぶした平面作品を、画廊の壁面を埋め尽くすように展示。別室では、同じく英字新聞の紙面をスキャンした画像を高速のスライドショーで上映し、「HOPE」の単語だけが一カ所に留まり続ける映像作品を出品した。点在する無機質な活字が示すかすかなHOPE=希望。そこには、どのような形であれ希望を求めずにはいられない人間の本性が表現されている。同時に、作品から滲み出る膨大な時間と作業から「徒労」の二文字を連想した。
2012/08/09(木)(小吹隆文)
キリコ Viewing_02
会期:2012/08/01~2012/08/18
Port Gallery T[大阪府]
祇園の舞妓だった祖母のアルバムと、彼女へのインタビューをもとに制作した私家版『見世出し』。その素材として使用した写真や構想ノートを展示した。もちろん、肝心の私家版を読むこともできた。キリコ特有の私小説的な作風はこれまでと同様だが、対象が自分ではなく祖母になったことで、過去の作品とは少々ニュアンスが異なっていたのもまた事実。特に、祖母が語る舞妓時代の華麗なる人脈や武勇伝は痛快の極み。時代がかった写真とともに読み進むことで、波乱万丈の一代記が味わえた。本作を通じて、彼女は新しい引き出しをひとつ増やしたと言えよう。
2012/08/03(金)(小吹隆文)
藤永覚耶 展「とどまり ゆらめく」
会期:2012/07/31~2012/08/12
Gallery PARC[京都府]
森の情景や、植物、昆虫などのモチーフを、独自の技法で描き出す藤永覚耶。彼はまず、対象をピンボケで写真撮影し、その画像をもとにアルコール染料インクで点描画を制作、最後に溶剤をかけて画面を溶かしてしまう。もともとぼんやりとしたイメージは一連の作業を経てさらに抽象化し、画面上を光の粒が絶えず流動しているかのような絵画が出来上がるのだ。藤永のテーマは「個人の先入観や価値観をぬぐい去った等価な世界に立ち戻るような感覚」を表現することだが、彼は確かにその瞬間を捉えつつあるのではなかろうか。
2012/07/31(火)(小吹隆文)
國府理「ここから 何処かへ」
会期:2012/07/28~2012/09/09
京都芸術センター[京都府]
南北2つの展示室を舞台に、2点の作品が出品された。南ギャラリーでは、電動の軽トラックが微速で直径約6メートルの円を描いており、周回の途中でヘッドライト部から映像が投影されていた。北ギャラリーの作品は、巨大なパラボラに土が敷き詰められ、シロツメクサの種がまかれている。天井の照明は建物屋上に設置された風力発電機(これも作品)と連動しており、風力による光でシロツメクサの発芽を助ける仕組みになっている。國府の作品は主に機械を用いており、メカへの憧れと現代文明への警鐘を同時に含む点に特徴がある。本展は後者に重きを置いているようだが、風力発電の光があまりにもか細い現実を前に、むしろエコ原理主義への皮肉ではないかと勘ぐったりもした。
2012/07/30(月)(小吹隆文)
プレビュー:若手芸術家・キュレーター支援企画 1floor 2012「TTYTT, -to tell you the truth,-」
会期:2012/08/25~2012/09/17
神戸アートビレッジセンター[兵庫県]
若手アーティストおよびキュレーターの育成支援を目的に、2008年から毎年行なわれている公募企画。月1、2回のミーティングを重ねながら、作品プランについて協議を重ねるだけでなく、展覧会タイトルやチラシ、ポスターなどの広報物、会期中の関連イベントもアーティストとスタッフが共同で企画する。今回選ばれたのは、陶芸作家でパフォーマンスユニット「contact Gonzo」のメンバーでもある金井悠と、シルクスクリーンを用いたインスタレーション制作とプリントプロダクトユニット「AO」で活動する小出麻代の2人。両名とも展示のみに留まらない活動が評価されており、この2人だからこそ可能な企画の実現が期待される。
写真:上=金井悠《OOPARTS-改-》2008、下=小出麻代《nu show》2010
2012/07/30(月)(小吹隆文)