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小吹隆文のレビュー/プレビュー

プレビュー:自然学~来るべき美学のために~

会期:2012/08/11~2012/09/23

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

日本の成安造形大学と英国のロンドン大学ゴールドスミスカレッジの国際学術交流プロジェクトに端を発し、成安造形大学と滋賀県立近代美術館の連携推進事業として行なわれる企画展。21世紀の最も大きな課題である地球環境問題に対し、芸術がどのようにアプローチすべきかを考察。芸術の論理基礎である「美学」を、「自然」をキーワードに新しく組み替え、「自然学」という新たな枠組みを提唱する。出品作家は、石川亮、宇野君平、岡田修二、木藤純子、ジョン・レヴァック・ドリヴァー、Softpad、西久松吉雄、馬場晋作、真下武久。会期中の8月11日にはプロジェクトのコアメンバーによる国際シンポジウムも行なわれる。また、2013年3月には英国展も予定されている。

2012/07/30(月)(小吹隆文)

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高村総二郎 展

会期:2012/07/17~2012/07/31

サコダアートギャラリー[兵庫県]

橋本龍太郎元首相以降の歴代首相と、石原慎太郎、小沢一郎、竹中平蔵、杉村太蔵の肖像画16点を展覧。これらは毎年の年賀状用に描いた作品で、首相が2年以上続いたときは首相以外の話題の政治家を描いたという。また、小沢一郎を描いた1点はほかよりサイズが大きかったが、これは展覧会の見栄えを考慮して本展直前に描き下ろしたものだ。画風はいずれも典型的な具象の肖像画で、別に茶化しているわけではないのだが、作品を見ているとなぜか笑えてくる。彼らの顔が実に個性的だからというのもあるが、それ以上に、政治家を描くという行為自体が風刺から逃れられないからだろう。

2012/07/28(土)(小吹隆文)

作田富幸 展

会期:2012/07/13~2012/07/29

アートゾーン神楽岡[京都府]

作田は銅版画家で、主に首都圏で活動している。彼の主題は「人間」もしくは「人間の顔」で、私は本展で初めて彼の作品を見た。出品作品のメインは《20 visitors》と題された全身像のシリーズと、《100 faces》と題された9点組の大作である。後者は、はがき大の小品100枚を制作し、36点貼り付けたパネルを1ピースとするもの。うち4ピースには手彩色が施されている。人間を描くといっても、作田は具象作家ではない。大木の枝が顔になったり、全身が引き出しだらけ、眼だらけなど、どの作品も異形の姿をしているのだ。それらを見て、ボッシュやアルチンボルドの作品を連想する人もいるだろう。あらゆる形態やモチーフをも使って人間を描き切ろうとするその姿勢には、凄みすら感じられる。

2012/07/17(火)(小吹隆文)

2012イメージの新様態 no.21「Out of Place」

会期:2012/07/17~2012/07/29

GALLERY SUZUKI、ANTENNA MEDIA[京都府]

GALLERY SUZUKIで毎年開催される恒例の企画展。今年は伊丹市立美術館の藤巻和恵をキュレーターに招き、会場を2カ所に増設して行なわれた。出品作家は、AKI INOMATA(映像、他)、上村亮太(絵画)、川辺ナホ(写真、他)、田口行弘(映像)の4名。私のお気に入りはAKI INOMATAで、やどかりに自作の小オブジェを提供する《やどかりに『やど』をわたしてみる》や、ペットのインコが本人より先にフランス語のフレーズを覚えてしまう《インコを連れてフランス語を習いに行く》は、どちらも傑作だった。もちろんほかの3人も秀作ぞろいで、見応えあり。2つの会場は少々離れており移動が手間だったが、それを補って余りある充実した展覧会だった。

2012/07/17(火)(小吹隆文)

乃村拓郎 展「Can you shed tears?」

会期:2012/07/11~2012/07/18

GALLERY 301[兵庫県]

板ガラスを割り、その美しいひび割れを提示した平面作品や、ガラスのコップを割って元通りに継いだ立体作品、錆びた部分と磨き上げた部分が連続する鉄柱など、物質の諸相をありのまま見せる作品が並んでいた。どの作品も見かけの手数は少ないが、完成までのプロセスには相当な手間とロスが生じているのではなかろうか。そうした作業工程での労苦を感じさないクールなたたずまいが格好いい。

2012/07/15(日)(小吹隆文)