artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
白上太朗 展
会期:2012/07/03~2012/07/08
GALLERY SUZUKI[京都府]
全長約3メートルの巨大な伊勢海老が宙づりにされ、ほかには動物の頭蓋骨2点が展示されていた。といっても、もちろんそれらは本物ではなく、どれも木彫作品だ。造形は具象そのもの。自分が好きなものをそのまま造形化したということだろう。大抵の男性は子どもの頃に、昆虫や爬虫類、甲殻類を怪獣みたいで格好いいと思っていただろう。彼の作品はそんな子ども時代からの憧れをそのまま具現化したものである。あまりにもストレート過ぎて芸がないとも言えるが、今回は作家の混じり気のない気持ちが上回っていた。
2012/07/03(火)(小吹隆文)
井上雅之 展「初形より─山」
会期:2012/07/02~2012/07/07
番画廊[大阪府]
会場には山のような形をした大きな陶立体が1点。四角い箱を積み重ねた形状をしており、珊瑚や多孔質の物質を思わせる。形態の面白さはもちろんだが、細部も多彩な色合いや質感、大小さまざまなひび割れを持っており、間近で凝視しても見飽きることがなかった。表面の多彩な表情は、釉薬を何度も重ね塗りして焼成するなどしてつくり出すらしい。彼の個展は関西では12年ぶりということだが、これだけの存在感を放つ作品を滅多に見られないのは寂しい。できればもう少し機会を増やしてほしいものだ。
2012/07/02(月)(小吹隆文)
プレビュー:現代美術二等兵活動二十周年記念「駄美術大博覧会」
会期:2012/07/13~2012/07/25
HEP HALL[大阪府]
お菓子に駄菓子があるように、美術界に“駄美術”があってもいいじゃないか。そんなすっとぼけたコンセプトを引っ提げ、おやじギャグも真っ青の腰砕け系お笑いアート作品をつくり続けている現代美術二等兵(籠谷シェーンとふじわらかつひとによるアートユニット)。彼らの活動二十周年を記念して、新旧作品100点以上を集めた一大イベントが開催される。「二十周年」や「記念」というアニバーサリーな響きに惑わされることなかれ。彼らの活動はひたすら馬鹿馬鹿しく、ナンセンスなのだから。呆れ、笑い、脱力して、いつの間にかわが身に沁みついたハイアートの垢をこすり落とす。それが本展の正しい楽しみ方だ。なお、本展は10月に京都に巡回。12月には東京展も予定されている。
2012/06/30(土)(小吹隆文)
プレビュー:リアル・ジャパネスク:世界の中の日本現代美術
会期:2012/07/10~2012/09/30
国立国際美術館[大阪府]
1970~80年代生まれの日本人美術家9名(泉太郎、大野智史、貴志真生也、佐藤克久、五月女哲平、竹川宣彰、竹崎和征、南川史門、和田真由子)を起用した展覧会。この世代の課題を、欧米美術の行き詰まりに基づく価値観の多様化、1960年代生まれの美術家の仕事の超克、美術情報の氾濫、と規定し、その状況に知的かつ誠実に対応する事例として彼らの仕事を位置づける。同館で昨年に開催された「世界制作の方法」以来となる若手日本人作家の企画展だけに、期待が高まる。
2012/06/30(土)(小吹隆文)
中島麦 僕は毎晩、2時間旅をする─アクリル絵具の色・瞬間─
会期:2012/06/26~2012/07/15
サクラアートミュージアム[大阪府]
通勤等で電車の車窓越しに見た風景をもとに、ドローイングやペインティングを制作する中島麦の個展。ドローイング、ペインティングとも25点が展示された。ドローイングで半抽象化された風景は、ペインティングで更に単純化が進み、なかにはシンプルかつ鮮やかな色面に生まれ変わった作品も。作風はこれまでと同様だが、会場の2室をドローイングとペインティングに分けたこと、吹き抜けによりその2室が連続していたこと、出品作が大作揃いだったことがよい方向に作用して、一作家の思考の変遷が手に取るように理解できる、見応えのある展覧会に仕上がっていた。
2012/06/26(火)(小吹隆文)