artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

イケミチコ個展─神経の再生

会期:2012/05/17~2012/05/27

LADSギャラリー[大阪府]

会場に入ってまず目につくのは、巨大な機械型の立体作品だ。作品名は《神経再生マシーン 希望号》。ワイングラスにメッセージを書き込み、ベルトコンベアーに載せてモーターを作動させると、2メートル近い高さまで運ばれたワイングラスが落下して粉々に砕け散る。この「破片」は彼女の他の作品にも共通する要素で、本作の周囲には砕けたガラス片を用いたミクストメディア作品が並んでいる。また、奥の部屋には、人間の下半身に目が付いた雌雄両性の存在《未来人間》を描いた絵画とオブジェも。なんだかもう、笑ってしまうぐらいにパワフル&ポジティブ。ご高齢のベテラン作家とは思えぬ振り切れぶりに、こちらも元気をチャージさせてもらった。同時に、彼女は会場が大きいほど本領を発揮する作家であることを確信した。

2012/05/18(金)(小吹隆文)

平田さち展─せまく広く、もっと大きくもっと小さく

会期:2012/05/03~2012/05/20

ギャラリー・パルク[京都府]

不定形にカットした大小のカッティングシートをガラス窓に貼り(会場の画廊は、壁面のうち2面がガラス窓になっている)、床には同様のピースが立体化したオブジェを配置するインスタレーションを発表。また、ガラス窓の一部は薄いブルーとピンク系の絵具で四角く塗られていた。彼女の作品は過去に何度か見たことがあるが、私が見たなかでは今回が最も成功していたと思う。その理由は、平面と立体の組み合わせが効果的だったからだ。ただ、本展では課題も浮き彫りになった。立体の仕上げが雑なのだ。この点を改善すれば、彼女の作品はさらに魅力を増すであろう。

2012/05/15(火)(小吹隆文)

ロバート・プラット展─幻小屋と飾りの隠者

会期:2012/05/05~2012/05/27

ハイネストビル[京都府]

自然と人工物の対比を、デジタル画像のピクセルを思わせる描法で表現していたロバート・プラット。本展では、ヨーロッパの森の隠者と東洋の禅画をもとにした絵画作品を発表した。また、会場中央にはテントと稲藁を用いた小屋が設置されており、その内部ではカメラ・オブスキュラで作品が見られるようになっていた。さらに、会場内はスモークが立ち込めていて、まるで薄い霧のなかで作品を見ているかのようだった。これらは、絵画を「見る」行為を再考するための積極的な演出であろう。彼は前回の個展後に英国に帰国したので、今後作品を見る機会は滅多にないと思っていた。それがわずか2年で再会できたのだから嬉しい限りだ。聞けば、現在はアメリカのミシガン大学で教鞭を執りつつ制作しているとのこと。今後も日本で継続的に個展を行なってほしい。

2012/05/12(土)(小吹隆文)

今村源・袴田京太朗・東島毅「Melting Zone」

会期:2012/05/05~2012/06/02

ARTCOURT Gallery[大阪府]

事前に「ジャム・セッションのような展覧会になる」と聞いていたが、なるほどこのようなかたちだったとは。ジャムといっても3人が共作するのではなく、作品はあくまでそれぞれのものが展示されている。しかし、作品の配置を熟考することで、互いの作品があるときには近景になり、またあるときは遠景になって作用し合っているのだ。特に活躍しているのが今村の地下茎のような作品で、3人の世界をくっつける接着剤のような役割を果たしていた。また、中庭に置かれた東島の大作《聴嵐》(481×851cm)も、彼のこれまでの作品とは異なる存在感を放っていた。

2012/05/10(木)(小吹隆文)

谷内薫 展

会期:2012/05/08~2012/05/13

ギャラリー恵風[京都府]

粘土板にスタンプをしたり、切れ込みを入れてから折り曲げて立体化し、素焼きの後、薄く釉薬をスプレーするなどして焼き上げた陶立体。壁掛け型の作品と貝殻のような小品があり、オブジェでありながら使い方次第では器としても成立する。作風はいままでの延長線上で変化はないが、作品から受ける印象はここ1年でずいぶん変化した。すなわち、良い意味で角が取れたのだ。元々の尖鋭さを保ったまま間口が広がったのだから、これは強い。彼女の作品は、より幅広い層に受け入れられる新たな段階に入ったのかもしれない。

2012/05/08(火)(小吹隆文)