artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:木津川アート2011「明日への記憶」
会期:2011/11/03~2011/11/13
木津川市木津本町、上狛、加茂[京都府]
昨年に第1回が開催され、遠来の観客と地元住民の双方から高く評価された「木津川アート」。2度目の今回は、昨年の会場のうち鹿背山エリアを外して、新たに加茂エリアが加わった。会場の3地区はいずれもJR沿線なので、ダイヤの確認さえ怠らなければ前回よりも楽に移動ができそうだ。地域の古い家屋、店舗、工場跡などに現代アートを設置して、木津川市の魅力を再発見しようというテーマは前回と同じだが、関西では同種の地域型アートイベントが増加している。供給過剰の状況で、たった1年とはいえ先輩の「木津川アート」が、どんな成果を上げるかに注目したい。
2011/10/20(木)(小吹隆文)
中村文治 作品展 II
会期:2011/10/18~2011/11/06
arton art gallery[京都府]
昨年の大阪での個展で登場した器の形をした木彫作品が、今回は全面的に展開された。その形状から一見すると陶器と見間違えそうな作品だが、近くでよく見れば、木彫特有の柔らかみのある質感、ざっくりしたノミ跡、岩絵の具などで施された着彩に気付き、先入観とのギャップに驚かされる。お茶碗のように両手で抱えて観賞すれば、一層親しみが増すであろう。アートファン以外に、陶芸、工芸、茶道の趣味を持つ人にもアピールするかもしれない。侮れないポテンシャルを秘めた作品と言えよう。
2011/10/18(火)(小吹隆文)
伝統芸能バリアブル
会期:2011/10/16
京都芸術劇場 春秋座[京都府]
キュピキュピの主宰者で、映画監督としても活躍する石橋義正が、キュピキュピと伝統芸能を融合させるユニークな試みを行なった。演目の構成は、ダンス、音楽、映像(2日と3日)、照明が融合したキュピキュピ特有のパフォーマンスと、能楽、長唄、浪曲が交互に登場する形式で、両者をつなぐ役割も兼ねて「打打打団 天鼓」の和太鼓演奏が節目ごとに行なわれる。もちろん、伝統芸能の場面でも照明やスモークなどの演出があり、どちらかといえばキュピキュピの世界に伝統芸能を引き込んだ作品であった。生粋の伝統芸能ファンの評価はわからないが、元々雑食性だったキュピキュピの世界が、この公演を機に更に広がるとすればウェルカムだ。特に3D映像は効果的で、今後も多用される可能性が高い。なお、本公演は「KYOTO EXPERIMENT 2011 京都国際舞台芸術祭」のプログラムである。
2011/10/16(日)(小吹隆文)
榎忠 美術館を野生化する
会期:2011/10/12~2011/11/27
兵庫県立美術館[兵庫県]
数々の異色作で、半ば伝説的存在といえる榎忠。美術館や画廊という既成のシステムに頼らず、会場探しからすべてを自力で行なうスタイルを貫徹したため、彼の作品には現存しないものも多い。それゆえ、美術館での大規模個展は不可能だと思い込んでいたが、遂にその機会がやって来た。出品作品には旧作も含まれるが、多くは新たなアレンジが施されており、榎自身もすべてが新作という意識で展覧会をつくり上げたという。自動小銃をモチーフにした作品、パフォーマンスでお馴染みの大砲、おびただしい数の薬莢を用いたインスタレーションなどはこれまでにも見たことがあるが、溶鉱炉の廃棄物(不純物を多く含む鉄の塊)や、パイプラインに使用される巨大な鉄管(製品検査用の断片)などの作品は、まったくの新作。それらには、ほとんど榎の手が入っておらず、素材本来の美を抽出している。こうした榎忠作品の知られざる側面に光を当てたのは、本展の功績と言えよう。
2011/10/12(水)(小吹隆文)
牛久保賢二 写真展
会期:2011/10/07~2011/10/17
gallery Main[京都府]
平安神宮で、鴨川で、甲子園球場で、お台場で、顔前に鏡をかざした女子高生たちの姿を撮影した写真作品がズラリ。どの作品も、鏡の反射で顔だけが見えない。とてもシンプルなのに、いや、シンプルだからこそ、最高に格好いい作品だ。この手の表現を前にあれこれ言うのは野暮というもの。ひたすら「カッコいい!」と連呼することで、作家へのリスペクトとしたい。
2011/10/11(火)(小吹隆文)