artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
和田真由子「ドローイングの絵」
会期:2011/09/10~2011/10/15
児玉画廊|京都[京都府]
最近、児玉画廊が熱心にプッシュしている新進作家の和田真由子。私も過去に何度か彼女の作品を見たことがあるが、頭のなかが疑問符で溢れるばかりだった。しかし、本展で「イメージにボディを与える」というキーワードを得て、微妙な厚みを持って平面と立体の間を彷徨う彼女独特の世界観にようやく近づけた気がする。なるほどこの人がやろうとしていることは興味深い。そして、一見粗雑にしか見えない作品の外観も、コンセプトを明瞭にするために必要だったことがわかった。今さらながら自分の作品理解力の低さを嘆きつつ、やっとしっぽを掴んだ新進作家の世界を、これからも注視していこうと思う。
2011/09/10(土)(小吹隆文)
田中真吾 個展 識閾にふれる
会期:2011/09/02~2011/09/30
eN arts[京都府]
紙束製立方体をバーナーなどで炙り、生々しくも美しい焼け焦げのある作品をつくり出してきた田中真吾。本展では、従来の表現に建築廃材を組み合わせることにより、新たな世界をつくり出すことに成功した。また、炎を別の形で表わした写真作品や、油彩画、ドローイングも合わせて出品。これまでもオリジナリティ豊かな世界を見せてくれていたが、今回はその表現領域を一気に拡張し、自身のポテンシャルの高さをまざまざと見せつけた。
2011/09/10(土)(小吹隆文)
平松伸之 展
会期:2011/09/03~2011/09/24
CAS[大阪府]
平松伸之の作品は、自分の記憶が正しければ過去に一度しか見たことがない。2000年に国立国際美術館で行なわれた「空間体験《国立国際美術館》への6人のオマージュ」だ。その時、平松は美術館の展示室を駐車場へと変貌させる荒技を見せ、多くの人を驚愕させた。私自身、当時の記憶が鮮明だったので、今度は何をしでかすのかと期待して出かけたのだった。しかし、展示されていたのはカラオケ屋で見かけるような安っぽいミュージックビデオであった。作曲・演奏共に平松自身で、クオリティは決して低くない。しかし、ヒット曲のエッセンスをそこかしこに注入した楽曲にはオリジナリティがなく、聞けば聞くほどその無意味さに脱力感が広がるのだ。このえも言われぬ感情は何だ? 11年前の作品とは全然傾向が違ったが、やはりこの人はただ者ではないと、改めて確信した。
2011/09/05(月)(小吹隆文)
ジパング展 31人の気鋭作家が切り拓く、現代日本のアートシーン。
会期:2011/08/31~2011/09/12
大阪髙島屋7Fグランドホール[大阪府]
東京展での大々的なメディア露出や観客動員の話題が伝わり、関西でも注目が高まっていた「ジパング展」。もちろん、これが日本の現代アートのすべてではないが、仕掛人の三潴末雄(ミヅマアートギャラリー)と井村優三(イムラアートギャラリー)の現代アート観は、はっきり伝わった。関西の美術ファンとしては、日頃なかなか見られない首都圏の作家に数多く出会えたことも大きな収穫だ。本展はこの後京都に巡回するが、来年には国内の美術館数館でも開催が決定したそうだ。将来的にはアジアでの展開も視野に入れているらしいので、その動向には今後も注意を払う必要があるだろう。
2011/08/31(水)(小吹隆文)
名和晃平─シンセシス
会期:2011/06/11~2011/08/28
東京都現代美術館[東京都]
是が非でも見ておかねばと思っていた展覧会に、会期末直前に滑り込みで間に合った。本展絡みで作家本人に取材をしていたので、制作中の作品を見ていたし、展覧会の概要も知っていた。しかし、頭で思い描くのと生で見るのとでは大違いだ。こちらのイメージを楽々と上回るスケールの大きな展示に、文字通り圧倒された。個々の作品はもちろんだが、彼の場合、展覧会全体のパッケージングが非常に優れている。起伏を持った展示で観客を飽きさせず、最後までフレッシュな感動を保ち続けるのだ。特に、空間ごとに繊細な味付けを施した照明の見事さは特筆ものだ。
2011/08/26(金)(小吹隆文)