artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
NARA映像コテンパンダン展2011 in ならまち
会期:2011/09/17~2011/09/19
OKビル2Fコミュニティルーム、正木邸(奈良女子大セミナーハウス)、ならまち格子の家、奈良町振興館、カイナラタクシー綿町ビル、sample、藝育カフェSankaku、Gallery OUT of PLACE、他[奈良県]
伝統的な街並みが残る奈良市の奈良町界隈。同地の文化施設、画廊、空きテナント、飲食店などを会場に、映像作品ばかりを集めたアートイベントが催された。主催者は、昨年「奈良アートプロム(NAP)」を企画した面々。このイベントも、昨年とは内容が異なるものの、NAPの2011年バージョンと理解すべきであろう。昨年のNAPでは、エリアが広過ぎたのと、作品の品質にばらつきが見られるという弱点があったが、今回は各会場が比較的密集していたので移動しやすく、作品も秀作が多かった。よい意味でこちらの期待を裏切る充実したアートイベントだった(ちなみに私が気になった作家は、土屋貴史、林勇気、稲垣智子、大歳芽里、竹内邦昌である)。前回の課題を克服した主催者たちが、次回のNAPでどれほどのものを見せてくれるのか、早くも期待を抱いてしまった。
2011/09/18(日)(小吹隆文)
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2011
会期:2011/09/17~2011/11/23
六甲ガーデンテラス、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、オルゴールミュージアム ホール・オブ・ホールズ六甲、六甲ケーブル、六甲ヒルトップギャラリー、六甲山ホテル、オテル・ド・摩耶(サテライト会場)[兵庫県]
阪神間の身近なレジャースポットであり、都市に隣接する貴重な自然空間でもある六甲山。その山上に点在するレジャー施設などを会場に、昨年に引き続きアートイベントが開催された。山上を散歩しながらアートを体験し、同時に六甲山の豊かな自然に気付いてもらうというコンセプトは秀逸で、今年も植物園内を移動している最中に、「やっぱり、ここはいい所だなー」とつぶやいてしまった。ただ、昨年に比べると作家・作品数が絞られており、六甲ガーデンテラスと六甲カンツリーハウスの展示がやや寂しかったのも事実。そこを観客がどう判断するかが、今回の評価の分かれ目となるだろう。
2011/09/16(金)(小吹隆文)
もう一人の私の写真展 Love*Sae
会期:2011/09/13~2011/09/17
Calo Bookshop & Cafe[大阪府]
作家(匿名)は解離性同一性障害を持つ人物で、主人格の自分とは別にもう一人の別人格・Saeが同居している。本展では、Saeが撮影した写真&テキストと、主人格が写真に付けた一説の言葉をセットにして展示した。2人の人格はお互いの存在を知っており、かつては反目し合っていたが、今では作品制作を通して安定した関係が続いているそうだ。私はこの障害について無知なので、的確に説明することができない。ただ、このような表現行為が可能であることを初めて知ったので、ひたすら驚いた次第だ。
2011/09/14(水)(小吹隆文)
加賀城健 展
会期:2011/09/13~2011/09/25
ギャラリー揺[京都府]
染色工芸では失敗とされるブレやボケをあえて生かしたり、ドローイング、ペインティング、コラージュといった技法を大胆に導入して独自の染色作品を模索している加賀城健。今回は市販のテントを流用し、新たに張った布地にペインティングの要領で染めを施した作品と、伸子張りの情景からインスパイアされた作品を発表。どちらもピンと張った布地の美しさを強調した表現で、どれほど作品がアート寄りになっても、彼の出自が染色だと分かる内容となっている。また、加賀城とテントの関係は、彼が子どもの頃に景品で当たったテントを室内に張って遊んでいたことに由来するそうで、個人的な記憶をダイレクトに反映した作品を出品したのも本展の特徴である。
2011/09/13(火)(小吹隆文)
中島麦 悲しいほどお天気
会期:2011/09/09~2011/10/10
Gallery OUT of PLACE[奈良県]
風景から着想した色鮮やかな抽象画で知られる中島麦。今回は画廊壁面に巨大な壁画を描くとともに、画廊壁面と同じ形(五角形)の小品を大量に展示した。壁画は未完成の状態で中断しており、最終日のライブペインティングで完成させる。また、会場には中島が今夏に東北地方を訪れた際に撮影したスチール写真をつなげた映像作品も展示されていた。そのなかには大震災の被災地の情景も含まれており、今回の個展を象徴する家型のフォルムも、ひょっとしたらその時の経験が影響しているのかもしれない。
2011/09/11(日)(小吹隆文)