artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
飛鳥アートプロジェクト
会期:2011/11/23~2011/12/25
奈良県明日香村(石舞台古墳、奈良県立万葉文化館、国営飛鳥歴史公園 高松塚周辺地区、川原寺跡ほか)[奈良県]
古代の遺跡や社寺で知られる奈良明日香村。同村の高松塚古墳や石舞台古墳周辺、橘寺、川原寺跡、奈良県立万葉文化館で、現代美術のプロジェクトが行なわれた。明日香村は意外と広く、これらの会場を1日で踏破するのは難しい。それゆえ今回は、若手アーティストが最も多く集結した「国営飛鳥歴史公園・高松塚古墳周辺地区」に的を絞って観覧した。招待作家の淀川テクニックをはじめとする11組が参加した同地区。地域住民の協力を得て赤いゴミと竹で物見櫓をつくった淀テクや、高松塚古墳周辺で約3,000足分の下駄の部材を用いてランドアートをつくったHUST(2人組ユニット)、小さな石片を積み上げた蟻塚のような立体の北川太郎など、環境と馴染んだ展示が数多く見られ、十分納得できる水準だった。今後も継続していけば、地域観光の一助になれるかもしれない。ただし、季節だけは再考すべき。真冬に野外展を行なうのはさすがに無理がある。
2011/12/11(日)(小吹隆文)
ふなだかよ展
会期:2011/12/05~2011/12/10
O Gallery eyes[大阪府]
出品作品は絵画と写真に大別される。絵画は作者の幼少時の写真をモチーフにしたもので、母の愛を一身に受ける幸福感に満ちている。一方、写真は料理が器から溢れ返った状態を写しており、グロテスクな趣が強い。作者はこれら2種類の作品を並置することにより、共依存の母子関係と、偏愛が人間形成に与える影響について表現しているのだ。ただしネガティブ一辺倒ではない。偏愛もまた人間の根源にあるものだという思いを、ほかならぬ彼女自身が持っているからだ。彼女の作品は矛盾する両義性を持つが、それゆえ絶望から救われているのかもしれない。
2011/12/05(月)(小吹隆文)
加納俊輔・高橋耕平 展『パズルと反芻』
会期:2011/11/30~2011/12/23
Social Kitchen、LABORATORY、Division[京都府]
写真を多用し、既成概念をずらす作風が特徴の加納俊輔と、主に映像を用いて、反復のなかに起こるずれや違和感を表現する高橋耕平。作風に共通項を持つ2人が京都市内の3つのオルタナティブスペースで個展を開催。同時に、ゲストを招いてレクチャーも3度行なわれた。展示は、Social KitchenとLABORATORYではそれぞれの近作と新作を展示し、Divisionではお互いに素材を交換して制作するコラボレーションであった。近年、京都ではコマーシャルギャラリーの存在感が増しているが、そこではフォローできないタイプの表現や企画があるのもまた事実。その受け皿として、貸し画廊だけでなくオルタナティブスペースが台頭しつつあるのだとすれば、アートファンにとって朗報である。
2011/12/03(土)(小吹隆文)
I SEE THE MOON 山本恵
会期:2011/11/28~2011/12/17
Gallery AMI & KANOKO[大阪府]
白を基調としたボックス状のオブジェが特徴だった山本の作品。しかし、近年は作品のバリエーションが増えつつある。本展でも、蓄音器のパーツを流用したオブジェが多数展示されていた。なかにはほとんど加工されていない作品もあるのだが、これが想像以上にいい味を出しており、彼女の世界に更なる広がりと奥行きを与えていた。
2011/11/30(水)(小吹隆文)
住吉明子 個展 サムシング・ライク・イット─It is clear─
会期:2011/11/25~2011/12/23
TEZUKAYAMA GALLERY[大阪府]
想像上の生物たちを、石粉粘土などで造形したりドローイングで表現している住吉明子。その作風はさらに進化し、本展では、植物、コケ、造花などを素材とする動物たちの巣まで制作されており、展示もオブジェ単体というよりはインスタレーションの趣が強くなっている。彼女がこのままファンタジーの世界に突入していくのかは定かでないが、世界観を徹底することで現状を乗り越えていくのも、ひとつの方法論であろう。
2011/11/30(水)(小吹隆文)