artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

梅田哲也 展覧会「小さなものが大きくみえる」

会期:2011/11/12~2011/12/04

新・福寿荘[大阪府]

大阪市西成区の下町にある築60年のアパート1棟を丸ごと使って、梅田哲也の大規模なインスタレーションが披露された。作品は日用品や家電を改造した装置的なもので、光や水、音などを駆使するのが特徴である。展示は室内だけでなく屋根裏にも及び、床をぶち抜いて1階と2階にまたがる作品など、大胆かつ自由闊達な仕上がりになっていた。言い換えれば、子どもの頃に秘密基地をつくったノリそのままであり、来場した子どもたちが大喜びしていたのも当然と言えよう。梅田は神戸アートビレッジセンターでも個展を同時開催しており、まったく異なる環境でどのような世界を披露しているのかにも興味が募る。

2011/11/12(土)(小吹隆文)

川西英コレクション収蔵記念展「夢二とともに」

会期:2011/11/11~2011/12/25

京都国立近代美術館[京都府]

神戸を拠点に活動した版画家の川西英。彼は自身と同年代の版画作品等を1,000点余も所蔵しており、それらが一括して京都国立近代美術館に収蔵されたことを記念して行なわれたのが本展だ。コレクションの約1/3を占めるのが竹久夢二で、本展でも夢二の作品群がメインとなっている。聞くところによると、国立美術館に竹久夢二の作品が収蔵されるのは初めてらしい。また、同コレクションには恩地孝四郎など創作版画運動の作家も多数含まれており、彼らと竹久夢二を同一ライン上で扱うことにより、日本の版画史に新たな1ページが開かれるかもしれない。

2011/11/10(木)(小吹隆文)

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山添潤 彫刻展

会期:2011/11/08~2011/11/20

ギャラリー揺[京都府]

石彫の新作・近作を出品。山添の特徴は、完成形を目指して造形するのではなく、素材との対話を通じて徐々に形が出来上がることだ。それゆえ作品には深い思念が感じられ、時間をかけて観賞するほど豊かな実りを得ることができる。そんな山添だが、新手法の模索も怠ってはいない。作品全面に黒のアクリル絵具を塗り、ワイヤブラシで削り取ることでメタリックな質感を得るなど、新作には幾つかの新しい試みが見られた。大転換はしないが、小さな進化を着実に重ねていく。それが山添流なのかもしれない。

2011/11/08(火)(小吹隆文)

谷内薫 作品展III

会期:2011/11/08~2011/11/27

arton art gallery[京都府]

櫛目を入れた粘土板をひねって、貝や木の葉を思わせる形状の陶器、オブジェを制作する谷内薫。初個展以来ハイペースで活動を続けている彼女だが、ここ1年で明らかに洗練度が増している。初期作品は生々しい有機性が際立っていたが、近作では生命感とエレガンスがちょうどいいバランスで融合するようになったのだ。オブジェと器、工芸とアートなど、複数の領域を包含する独自の造形が、徐々に結実しつつあるのだろう。

2011/11/08(火)(小吹隆文)

木津川アート2011「明日への記憶」

会期:2011/11/03~2011/11/13

京都府木津川市の木津本町エリア、上狛エリア、加茂エリア[京都府]

昨年に続き2年連続で開催された「木津川アート」。今回は会場を一部変更して、木津・本町、上狛、加茂の3カ所を会場に設定。各エリアをJRやシャトルバスで結ぶ形式となった。地域に残る価値のある建築物や空きスペースを有効活用して現代アート展を行なうのが本展の特徴だが、木津・本町の奥鉄工所(伊吹拓と林和音が出品)と、加茂の加茂JA倉庫(長谷川政弘、tagiruka、竹股桂が出品)は出色の出来栄え。ほかにも質の高い展示が数多く見られ、充実した内容となった。また、地域住民との良好な関係も好印象を残した。来年以降の継続は未定だが、この2年間の成果を生かさないのはもったいない。なんらかのかたちでアートプロジェクトが継続することを望む。

2011/11/03(木)(小吹隆文)