artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
佐川晃司 展 絵画意識
会期:2011/10/10~2011/10/22
2kw gallery、2kw58[大阪府]
アトリエから臨む風景をもとに、ミニマルな形態と味わい深いマチエールが同居した抽象絵画をつくり上げる佐川晃司。大阪では久々の機会となった本展でも、その世界は健在だった。そして本展をより味わい深くしたのが、2kw58での小粋な演出。小部屋のさらに奥まったスペースを茶室に見立て、畳敷きの空間に風炉先屏風に仕立てた作品や茶道具などを並べ、自ら点前も披露したのだ。畳に座り、茶をいただきながら眺める絵画は、格別の趣があった。
2011/10/10(月)(小吹隆文)
秋山ブク「コンポジション6番:梅香堂の備品による」
会期:2011/10/08~2011/11/13
梅香堂[大阪府]
身体ひとつで会場入りし、現場の備品のみを用いてオブジェやインスタレーションをつくり上げる秋山ブク。主に首都圏で活動する彼の作品を、本展で初めて見た。いかにも仮設的なものを予想していたのだが、2フロアぶち抜きの巨大オブジェをはじめ、まさかこれほど造形性の高い作品が見られるとは。そして会場の梅香堂に、これだけ大量の備品が収納されていたとは。いい意味で予想を裏切る痛快な展覧会だった。
2011/10/08(土)(小吹隆文)
Palla/河原和彦 作品展「イコノグラフィー3 CLOUD/CROWD(クラウド)」
会期:2011/10/05~2011/10/31
Gallery Kai[大阪府]
建物や風景の画像を、向きを変えたり反転させるなどして何重にも重ね合わせ、未知の光景をつくり上げるPalla/河原和彦。新作では、大阪の地下街を行き交う群衆の足元を撮影した動画を用いて、映像と平面作品を発表した。彼が動画作品を発表したのは今回が初めて。動画特有の「時間」という新たな軸が加わったことで、新作にはこれまでにない独特の奥行き感が生じていた。3Dで撮影すれば一層不思議な世界が作れるかもしれない。新たなフロンティアを見つけ出した彼の、今後の展開に注目したい。
2011/10/08(土)(小吹隆文)
石塚源太─たゆたうさかいめ─
会期:2011/10/01~2011/10/29
ARTCOURT Gallery[大阪府]
円盤の支持体に金属部品やワイヤーなどを置いて研ぎ出した漆作品を中心に、お盆状の作品、優美な曲線を帯びた小オブジェなどを出品。円盤の作品は、漆黒の平面内にさまざまな模様が並んでおり、まるで夜空に輝く星座のようだ。本展では、それらを広い空間に点在させることで、今までの個展では味わえなかった醍醐味が得られた。画廊の広大な展示室が、作家のポテンシャルを引き出したと言えよう。
2011/10/06(木)(小吹隆文)
庭の見世物小屋 東義孝
会期:2011/09/28~2011/10/10
京都造形芸術大学 ギャルリ・オーブ[京都府]
昨年急逝した若手画家、東義孝。本展は、デビューした2005年以降の作品で彼の画業をたどる回顧展だ。東の作品は、人物や動物などのシルエットのなかにさまざまなモチーフを詰め込んだものが多く、甘美さと残酷さの同居に大きな特徴がある。画業はわずか5年ほどだが、その間にも試行錯誤が盛んに行なわれていたことが、100点余の出品作を通して伝わった。これは、彼が早くからコマーシャルギャラリーに身を置き、厳しい競争環境で切磋琢磨していたことと無縁ではないだろう。これまで作品を見る機会に恵まれなかった関西在住の美術ファンとしては、本展はせめてもの機会であった。それにしても早過ぎる死だ。残念というほかない。
2011/10/04(火)(小吹隆文)