artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
田辺由美子 展「After dish─皿の後─」
会期:2011/04/23~2011/05/08
應典院[大阪府]
自分が食したり商店で分けてもらった魚の骨を下処理して、群青色の毛氈の上に美しい模様を描き出した作品を展示。ほかには、魚の頭骨を分解して左右対称に並べた作品や、煮干しの頭部を用いた作品もあった。どれも驚くほど美しく、素材に気付くまでは優雅さを感じたほどだ。彼女の作品を見たのは約4年ぶりであり、その時の卵をモチーフにした作品とは全然違うが、鮮やかな手際は相変わらずだった。
2011/05/02(月)(小吹隆文)
転置─Displacement─
会期:2011/04/09~2011/05/22
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
寺田就子、野原健司、森末由美子、吉村熊象、寄神くりが出品。いずれも日常的な状況や素材を用いる作家で、現実を少しずらした状況をつくり出し、マジカルな世界観を提示する。なかでも、住宅広告をもとにしたフィールドワークを発表した吉村と、店舗のテント屋根や廃材を組み合わせたインスタレーションを見せた野原は印象的だった。寄神くりの展示も、私が今まで見た彼女の作品のなかでは最も大規模であり、説得力が感じられた。
2011/04/27(水)(小吹隆文)
カンディンスキーと青騎士
会期:2011/04/26~2011/06/26
兵庫県立美術館[兵庫県]
青騎士やドイツ表現主義について、僅かばかりの知識は持っていたが、実物を見る機会はあまりなかった。今回、それらを大量に、かつコンディションの良い状態で見られたのは収穫だった。あの色彩感覚は、当時の人にはさぞ強烈な体験だっただろう。また、カンディンスキーの前半期の作風の変遷も見応えがあった。カンディンスキーとミュンターの関係や、2人を引き裂いた20世紀前半の歴史というドラマチックな話題にも事欠かないので、そんな大河ドラマ的側面を強調すれば、普段は滅多に美術館に来ない人々も呼び込めるのではないだろうか。
2011/04/26(火)(小吹隆文)
中原浩大 展「paintings」
会期:2011/04/23~2011/05/28
ギャラリーノマル[大阪府]
2009年より制作を続けてきた、DVDの盤面にドローイングを描いたエディション作品1,000点と、デンマークの玩具「HAMAビーズ」10万ピースを用いた平面作品などを出品。HAMAビーズの作品は同じ色が隣り合わないように配色されたもので、オートマティズムの一種と言える。この作品を見て、2006年に彼が発表したツバメの群れを記録した作品の意味が少しだけわかった気がした。作品の意図に気付くまで5年もかかるとは情けない話だ。同時に、中原浩大の底知れなさを改めて思い知った。
2011/04/25(月)(小吹隆文)
コレクション展 1960-2000年代のファッション サンローランからガリアーノ、マックイーンまで
会期:2011/04/21~2011/06/28
神戸ファッション美術館[兵庫県]
1960年代から2000年代の代表的なファッションを、約30人のデザイナーによる約50点の作品で展観した。作品はレプリカではなく、すべて実物である。今までの同館の展示は服飾史をたどるように構成されていたが、現代の、それもつい10年ほど前の服をこれだけ大量に所蔵しているとは知らなかった。昨年10月に大規模なファッション写真のコレクション展を行なった時も思ったのだが、神戸ファッション美術館はまだまだポテンシャルを出し切っていない。日本中探してもここだけにしかないお宝を沢山持っているのだから、今後は出し惜しみせず、どんどん活用してほしい。
2011/04/21(木)(小吹隆文)