artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
オン・ザ・ロード 森山大道 写真展
会期:2011/06/28~2011/09/19
国立国際美術館[大阪府]
写真家・森山大道の、1965年のカメラ雑誌デビューから約半世紀に及ぶ活動を、10冊の写真集の流れに即して展覧。総点数400点以上に及ぶ大展覧会である。路上でのスナップ写真という制作スタイルは一貫しており、そのブレの無さには驚くばかりだが、写っている人間や空気感には、やはり時代の変化が感じられる。昔の方が濃い人が多く、現代に近づくほど軽薄な空気が感じられるのは、私の偏見だろうか。従来から指摘されてきた森山作品の特質に加え、仕事と時間が積み重なって初めて見える“時代”という巨大なものが感じ取れる展覧会だった。
2011/06/27(月)(小吹隆文)
大西正一「Untitled──セカイニフレルタメノホウホウ」
会期:2011/06/21~2011/07/09
風景、道具、機械、生き物など、およそあらゆるものを感情を排して撮影した写真が、一定のフォーマットに沿って並んでいる。4つの壁面のうち一面はグリッド状に整然と配置され、残りの面はランダムに並んでいるが、どうやら被写体のタイプによりグルーピングされているらしい。展示を見た瞬間、わが家のパソコンの画面やパソコン内の画像ファイルを連想した。われわれの脳内でも、案外本展と同じように情報の整理が行なわれているのかもしれない。
2011/06/23(木)(小吹隆文)
今、できること 京都造形芸術大学一汁一菜の器プロジェクト
会期:2011/06/21~2011/07/10
ギャラリー H2O[京都府]
東日本大震災の被災地で、人々が発泡スチロールや紙の食器を使っていることを知った京都造形芸術大学陶芸コースの学生・通信学生たち17名が、約800個の丼をつくって被災地の仮設住宅に贈った。本展はそのサンプル展示ともいうべきものだ。簡易な量産品を想像していたのだが、上質な1点ものが並んでいたのは良い意味で驚き。一汁一菜分が1セットになっており、それらを包む包装(染色品)も上品な仕上がりだ。これなら私が普段使っている食器より遥かに上等である。少しでも被災地の人々に役立てばと思う。
2011/06/22(水)(小吹隆文)
岸雪絵 展「a patched scene」
会期:2011/06/21~2011/07/03
ギャラリー恵風[京都府]
画廊のふたつの壁面にまたがる絵巻物風の大作に驚かされた。街中の風景を元にした版画だが、一つのモチーフが左右反転して繋がっているなど仕掛けが満載で、異世界に迷い込んだような気分になれる。彼女はこれまで小売店のショーケースに並んだ商品などを主なモチーフとしており、屋外を描くのは珍しい。本展で新たな可能性が示されたので、今後は作風が一層広がるかもしれない。
2011/06/22(水)(小吹隆文)
プレビュー:ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展
京都文化博物館 別館ホール[京都府]
会期:2011/07/22~08/14(前期)、10/07~10/23(後期)
数々のアニメ映画で知られ、シュルレアリストでもあるヤン・シュヴァンクマイエルと、同じく美術家で、ヤンの映像作品の美術や衣装を手がけていたエヴァ(妻、故人)の展覧会。2部構成になっており、前期では新装版の表紙のために描いた《アリス》や、ヤンが下絵を描き、茨城と京都の彫り師と摺り師が制作した木版画を展示。木版画は、原画、下絵、制作過程が伝わる版木と順序刷りも併せて出品される。後期は、映像作品にまつわる作品群の展示が行なわれる。ほかには、現在制作中のラフカディオ・ハーンの『怪談』のための挿絵や、細江英公が撮影したポートレートの展示も予定されている。
2011/06/20(月)(小吹隆文)