artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
高田竹弥 作品展「小さな窓から」
会期:2011/07/27~2011/08/07
高田の作品を見たのは約2年ぶりだ。廃材や木片、古書の一部、植物などに最小限の手を加える作風に大きな変化はないが、それでも幾つか新たな試みが行なわれており、作風の微妙な変化を楽しませてもらった。それにしても彼の作品から受ける感興は、詩や文学に接した時の感触に近い。これは私の勝手な推測だが、高田はフォルムよりも素材が持つソノリティ(響き)に重きを置いて制作しているのではなかろうか。
2011/07/28(木)(小吹隆文)
山田はるか ヘルタースケルター respect for OK!
会期:2011/07/08~2011/08/05
浜崎健立現代美術館[大阪府]
岡崎京子の著作『ヘルタースケルター』を、主人公に扮した作家自身(写真)と、原作通りに描き下ろした作画でリクリエイトした作品を出品。作品の一部になり切るといえば森村泰昌が思い浮かぶが、山田の作品も対象への愛と敬意に満ちていて感動を覚えた。漫画家による漫画のカバーは過去に何度か試みられているが、美術家が漫画をカバーし、自分自身が写真で登場する作品を見たのは初めてだ。この方法論には、おおいなる可能性を感じた。
2011/07/24(日)(小吹隆文)
堂島リバービエンナーレ2011「Ecosophia─アートと建築」
会期:2011/07/23~2011/08/21
堂島リバーフォーラム[大阪府]
哲学者のフェリックス・ガタリが提唱した「エコゾフィー」という概念に基づき、美術家と建築家がコラボレーションを行なった本展。まずは肝心の「エコゾフィー」を理解するのが筋だが、なまかじりでは敵わないことがわかり、早々に降参して会場へと出かけた。美術家と建築家のコラボにもさまざまなかたちがあり、巨大な構築物をつくり上げた展示も見られたが、私自身は建築家が前に出ない展示の方が相性がよかった(例えば、大庭大介さんの展示)。展示は、アニッシュ・カプーアの建築模型のような立体を中心に、地圏、水圏、空圏の3ゾーンが緩やかに連続する形態だったが、3圏の違いや役割についてはあえて明確にしておらず、私自身の「エコゾフィー」への理解不足もあって曖昧な印象がぬぐい切れなかった。ただ、大阪ではこの手の大規模な現代美術展が少なく、しかも美術家と建築家とのコラボなど皆無の状況なので、本展の開催自体は大いに歓迎である。
2011/07/22(金)(小吹隆文)
プレビュー:ジパング展─31人の気鋭作家が切り拓く、現代日本のアートシーン─
大阪高島屋7Fグランドホール、京都高島屋7Fグランドホール[大阪府、京都府]
会期:2011/08/31~2011/09/12、2011/09/28~2011/10/10
今年6月に東京・日本橋の高島屋で開催され話題を集めた同展が、関西でも開催される。本展は、百貨店が現代アートと本格的に向き合い始めた昨今の好況を象徴するような企画だが、関西の美術ファンにとっては、東京を拠点とする作家を数多く見られる貴重な機会でもある。その両方の意味で、本展が関西の美術ファンにどう迎えられるかが興味深い。
2011/07/20(水)(小吹隆文)
プレビュー:太田三郎「出石町の家」─戦後66年岡山空襲に寄せて─
会期:2011/08/01~2011/08/15
アートスペース油亀[岡山県]
昨年の8月も同会場で個展を行なった太田三郎。今回は1945年6月29日の岡山大空襲をテーマにした切手作品《POST WAR 66 戦災痕》や、戦時中の市民の暮らしに思いを馳せたインスタレーションなどを展示する。会場のアートスペース油亀は築約130年の古民家で、戦災を免れたため、岡山大空襲の時と同じ姿を保っている。太田のPOST WARシリーズを発表するのにふさわしい場所といえよう。
2011/07/20(水)(小吹隆文)