artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

epiphany─世界を発見する方法─

会期:2011/07/08~2011/07/18

中之島デザインミュージアム de sign de >[大阪府]

コンピューターや音響機器の特性を利用して批評的なサウンドアートをつくり出す高橋卓久真、サミュエル・テイラー・コールリッジの詩とギュスターヴ・ドレの挿絵をモチーフにしたインスタレーションを行なった岡田真希人、画家が絵を描いている姿の自画像を無数に複写、コラージュして絵画と写真の中間のような触感を持つ作品をつくり上げた来田猛。3人の作品を個展形式で同時に展覧した。いずれもユニークで質の高い展示を行なったが、私が最も驚いたのは来田の作品。最初に見た時は写真とは思えず、絵画なのにこのツルリとした表面はどういうことかと訝ったぐらいだ。今年2月に行なわれた京都市立芸術大学の作品展でもユニークな作品を発表し、話題を集めた来田。彼の引き出しには、まだまだ驚きのネタが隠されているのかもしれない。

2011/07/10(日)(小吹隆文)

飯田淑乃 展

会期:2011/07/09~2011/07/30

CAS[大阪府]

照明が落とされた空間には8点の写真が並んでいる。ナレーションが始まると、物語の展開に沿って1点ずつにスポットが当たり、最後には壁面に映像が投影される。物語はネズミを主人公にした昔話風のもので、明らかに先の大震災からインスパイアされていた。飯田はこれまで自分自身が特定のキャラクターになり切る作品を発表してきたが、新作はそれらとは大きく異なる。彼女の新たな側面を垣間見ると共に、ナレーションの上手さにも驚かされた。

2011/07/10(日)(小吹隆文)

中岡真珠美 展

会期:2011/07/04~2011/07/16

Oギャラリーeyes[大阪府]

風景を独自の視点で換骨奪胎させ、オリジナリティのある画面をつくり出す中岡。今回はそうした作品と共に、紙に水彩で描かれた32点組の連作を出品した。今までとは異なる画材を使いこなし、過去作との連続性を保ちつつ新たな作風に仕上げたのはお見事。連作でありながら単体でも成立する組作品という形式は、今後の彼女の作風に少なからず影響を与えるかもしれない。

2011/07/04(月)(小吹隆文)

柳澤顕 展「Painting as a System」

会期:2011/07/02~2011/07/30

ARTCOURT Gallery[大阪府]

コンピューターを用いてイメージを構築しながら、同時に自身の思考や身体性の介在が感じられる独自の平面表現を模索している柳澤顕。具体的には、コンピューターでつくり上げたイメージをカッティングシートで出力し、パネルに貼ったり着彩することで出来上がる作品だ。本展では、昨年の「VOCA展」出品作以外はすべて新作の14点を出品。作品を超えて会場壁面まで浸食する大作もあり、現在の充実ぶりが伝わる展覧会となった。また、制作過程の記録映像を上映していたのも、作品を理解するうえで大いに役立った。

2011/07/02(土)(小吹隆文)

ひらいゆう写真展「マダムアクション」

会期:2011/06/28~2011/07/10

アートスペース虹[京都府]

以前から彼女の作品に登場していた兵士人形(多くは道化の姿をしていた)に女装と化粧を施し、肖像写真として撮影した作品が並んでいた。男性と女性、虚構と現実の境界線が曖昧になった状態を定着させることで、既成概念を疑うことの大切さを静かに訴えているかのようだ。反対側の壁には荒涼たる氷河の情景を捉えた風景写真が展示されている。それはまるですべての価値観がリセットされた白紙の精神を象徴化しているようだった。

2011/06/28(火)(小吹隆文)