artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
SOURA-SAISAI 西村みはる・前川奈緒美
会期:2011/06/13~2011/06/18
Oギャラリーeyes[大阪府]
珍しい展覧会タイトルは、自分がこれまでに培ってきた感覚を信じて、画面上で自身の価値観を徹底的に探し求めることから名付けられたという(漢字では「捜羅再再」と表記する)。西村と前川は、共に描く行為のなかから空間をつくり上げていくタイプの画家だ。どちらの作品からもピンと張りつめた気迫が感じられ、響き合う緊張感に身が引き締まる思いがした。必然性のある2人展であった。
2011/06/13(月)(小吹隆文)
舩井裕 回顧展
会期:2011/06/07~2011/06/25
アートコートギャラリー[大阪府]
昨年6月に逝去した舩井裕。本展では彼の代表作である版画の連作やコラージュ作品、50数年ぶりに公開された油彩画など、約150点が展示された。洗練とユーモアをたたえた版画の連作はもちろんだが、ビニールシート、麻袋、板などをキャンパスに貼り付けて一部を焦がしたコラージュ作品も、圧倒的な存在感があって素晴らしい。画廊での展覧会にしては珍しい全64ページの図録も、秀逸な出来栄えだった。
2011/06/08(水)(小吹隆文)
村山幸子の世界
会期:2011/06/07~2011/06/12
ギャラリーマロニエ[京都府]
画廊の3階から5階を使った大規模な個展。還暦を迎えた作家にとって、集大成的な意味合いを持つ。5階では古着や端切れなどを用いた大規模なインスタレーションを展開(画像)。4階では1980年代に制作した、さまざまな素材でつくられたコスチュームを、実物と写真で紹介。3階は一転してひょうきんな張り子が並んでいた。あまりにも作風が違う張り子はともかく、5階と4階は見応えたっぷり。画廊メインで活動する作家は過去作品を振り返る機会が少ないので、貴重な機会と言える。ほかのベテランにも是非真似をしてほしい。
2011/06/07(火)(小吹隆文)
ポップ?ポップ!ポップ♡
コレクションに見るポップなアートの50年
会期:2011/04/29~2011/06/19
和歌山県立近代美術館[和歌山県]
ポップ・アートの代表作や、その影響が感じられる現代の作品など100点以上を展覧。2000年代以降の作品のなかには、「これをポップ・アートの文脈に入れてもいいの?」と疑問に思うものもあったが、そこは寛容に解釈することにした(タイトルに「ポップなアート」と記されているのは、そのためか?)。和歌山近美は関西の美術館のなかでも屈指の常設展示室を持っているが、コレクションも同様に質が高い。中途半端な企画展よりも見応えのある展覧会だった。
2011/06/04(土)(小吹隆文)
山江真友美 展 ─求めよ手の記憶─
会期:2011/05/31~2011/06/05
アートライフみつはし[京都府]
山江の作品は花がモチーフだが、現実の花を描いたものではなく、テーマも花そのものではない。“少女のエロス”を花に託して描いているのだ。薄く、柔らかく、しっとりとして、触れた途端に散ってしまいそうな繊細な花々。薄っすら入った差し色の赤が効果的で、乳白色の花びらが一層引き立って見える。匂い立つような画面を前に、しばし時の経つのを忘れた。
2011/05/31(火)(小吹隆文)