artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
新incubation3「On a Knife Edge──二つの向こう岸」展
会期:2011/05/31~2011/07/10
京都芸術センター[京都府]
活躍中のベテラン作家と新進気鋭の若手の個展を同時開催する企画展。3回目の今回は、松井智惠とHyon Gyonの競演だ。松井は、近年制作し続けている映像シリーズ《HEIDI(ハイジ)》の新作と近作3点及びドローイング5点を、会場内の3カ所で展示。Hyon Gyonは、母国の韓国に根差した巫女信仰の儀礼をモチーフとする絵画や映像作品を発表した。どちらの作品も、極度にストレスがかかった状態の人間や精神を表現しており、合理的な理解の外側にある世界を描いている。極めて女性的な表現と言ったらお叱りを受けるかもしれないが、おそらく男性作家からこのような作品が生まれることはないだろう。
2011/05/31(火)(小吹隆文)
没後100年 青木繁 展──よみがえる神話と芸術
会期:2011/05/27~2011/07/10
京都国立近代美術館[京都府]
39年ぶりにして過去最大規模、そして関西では初の青木繁展。主催者が謳う「最初で最後の~」が本当かはともかく、確かに見応えのある展覧会だった。私は過去に《海の幸》を何度か見たことがある程度のビギナーだが、《わだつみのいろこの宮》や《大穴牟知命》など、彼の絶頂期の作品を目前にすると、はっきりとテンションが上がった。なるほどこれが浪漫主義というものか。スケッチ、エスキース、最晩年の作品(画風が大きく変わった)、手紙などもしっかり揃っており、もう至れり尽くせりという感じ。満腹感に満たされて館を後にした。
2011/05/26(木)(小吹隆文)
プレビュー:「名和晃平─シンセシス」展
会期:2011/06/11~2011/08/28
東京都現代美術館[東京都]
2000年の初個展以来、国内外で着々と評価を高め、今やゼロ年代を代表する若手アーティストとなった名和晃平。CELLという概念をもとに、ビーズ、プリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど多様な素材を駆使して制作される作品は、高度情報社会における人間の知覚、身体、感性のあり方・変容を皮膚感覚で表現しているのが特徴だ。過去最大規模となる本展は確かに高いハードルだが、彼のことだからきっとその壁を越えて見せるだろう。そしてさらなる高みを見せてくれるに違いない。
2011/05/20(金)(小吹隆文)
プレビュー:オン・ザ・ロード 森山大道 写真展
会期:2011/06/28~2011/09/19
国立国際美術館[大阪府]
日本を代表する写真家のひとり、森山大道の、関西では初めての大規模個展。1965年から現在までの軌跡を、写真集10数冊の流れに即して展開。森山の個性と写真館の変貌を明らかにする。総出点数は400点以上。大阪出身ながら関西での展覧会が少なかった森山だけに、本展は関西の写真ファンにとって朗報と言えよう。
写真:森山大道《野良犬》1971年 個人蔵
©Daido Moriyama
2011/05/20(金)(小吹隆文)
プレビュー:日野田崇 個展「新しい筋肉」
会期:2011/06/04~2011/07/23
イムラアートギャラリー|京都[京都府]
複雑な曲線を描くフォルムと、漫画の一部を思わせる図柄を大胆に配した陶オブジェで知られる日野田が、新作展を開催。「新しい筋肉」と題して未来の人類のカタチを造形化する。今までの作品にはなかった彩色が多用されるので要注目だ。また、彼の個展では、プラスチックシートを用いて壁面にも装飾が施されるが、本展でも同様の手法でインスタレーション色の強い展示が行なわれる。
2011/05/20(金)(小吹隆文)