artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
金沢健一 展
会期:2010/05/08~2010/06/12
CAS[大阪府]
決められたモジュールにしたがって鉄板を切断し、積み重ねて溶接した立方体のオブジェを多数出品。溶接の方法により、作品には二つの系統がある。いずれにせよ、硬質かつミニマルな立体のバリエーションを楽しんだ。また、鉄板にバーナーを当てて鉄が溶けていく様子を、バーナーの反対側から撮影した映像作品も出品。徐々に流動体化していく鉄の様子は、立体のハードエッジな作風と対照的だった。
2010/05/08(土)(小吹隆文)
Palla/河原和彦 作品展「イコノグラフィー2『銀河』」
会期:2010/05/07~2010/06/06
ギャラリーKai、銀杏菴[大阪府]
1点の写真を何度も折り返して重ねることで驚くべき世界を表出させる、Pallaこと河原和彦。本展では海岸の岩場や大阪の港湾を素材にした新作の写真作品を発表。モノクロを選択したことにより、まるで水墨画のように幽玄なビジュアルが表現された。別会場の銀杏菴(今年で築100年の長屋)では、床の間で映像作品を展覧。空間とのマッチングが良く、スチール作品以上にマジカルな作品に仕上がっていた。
2010/05/08(土)(小吹隆文)
アートフェア京都
会期:2010/05/07~2010/05/09
ホテルモントレ京都 4階客室[京都府]
ホテルのワンフロアを会場に、33の画廊と2つの企画が参加。形式自体に新味はないが、京都初の本格的現代アートフェアとして注目を集めた。というのも、京都は作家を多数輩出しているが、現代アートのマーケットではないというのが通説だからだ。しかし、近代以前の美術工芸のコレクターは確かに存在するし、観光資源と組みわせることで地元以外の客層を呼び込むこともできる。工夫次第で京都を現代アートのマーケットとして確立できるのではないか、というのが主催者たちの思惑だったようだ。本稿執筆時でまだ正確な成績は確認できていないが、独自に幾つかの画廊にリサーチしたところ、予想よりも好結果だったとの返事を得た。もちろん画廊により好調・不調はあろうが、全体としては良好なスタートを切れたのではなかろうか。2年目以降の更なる飛躍に期待が持てそうだ。
2010/05/07(金)(小吹隆文)
神馬啓祐 展
会期:2010/05/03~2010/05/15
2kw gallery[大阪府]
不透明な中間色を薄く溶いて、直線、曲線、色面などを複雑に交錯させた絵画作品。画面いっぱいに要素が詰め込まれているのに、決して雑然としていない。また、構成要素を並立的に配置しているのに奥行きが生じているのも興味深かった。作者が不在だったので詳細はわからないが、どうやら厳密なルールに基づいて描かれているようだ。独自のスタイルをもった抽象絵画を描く若手の登場に、絵画の新たなトレンドを感じた。
2010/05/06(月)(小吹隆文)
國府理 展 surreal instruments
会期:2010/05/04~2010/05/16
アートスペース虹[京都府]
交通事故で身体にハンデを負いながらも制作意欲を失わない友人アーティストをリスペクトして、風変わりな車椅子と松葉杖を制作。車椅子は応接間の豪華な革張りソファーを流用したもので、モーターで稼働する。松葉杖は尖端に武器を装備したぶっ飛んだ造形だ。どちらも実用化に向けたものではないが、こうした道具にアーティストやデザイナーが目を向けるのは大切なことだ。彼らが格好いいデザインを提案し続けることで、車椅子や松葉杖への先入観を変えることができるかもしれない。
2010/05/04(火)(小吹隆文)