artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

公募京都芸術センター2010

会期:2010/02/05~2010/02/24

京都芸術センター[京都府]

南北二つのギャラリーでの展示プランを募集した本展。今回は映画監督の河瀬直美を審査員に迎え、126件の応募の中から寺島みどりと森川穣のプランが採用された。北ギャラリーを使用した寺島は、空間全体をキャンバスに見立てて巨大な壁画の公開制作を実施。絵ができあがる過程自体を表現として提示した。寺島は直感や身体性を重視するタイプ。幾層も色を塗り重ねながら落とし所を見つけ出すので、公開制作向きの作家と言える。一方、南ギャラリーの森川は、館の床下から掘り出した土や遺棄物を細長いスリット越しに見せるインスタレーションを発表した。ちょうど虫の目線で京都芸術センターのもうひとつの姿を覗き見るような作品で、部屋の壁に一筋の線が引かれただけに見えるミニマルな空間構成もスタイリッシュだった。動と静、二つの対比が際立つ今回の展覧会。河瀬監督の狙いもその辺りにあったのだろう。

2010/02/05(金)(小吹隆文)

高須健市 surface

会期:2010/02/02~2010/02/14

neutron-kyoto[京都府]

展示室の壁面いっぱいに、村上隆とのコラボで知られる某高級ブランドのモノグラムが貼り付けられていた。そして床には大量の紙屑が。漫画や雑誌の断片、折り込みチラシの類だ。それらはいずれも切り抜かれており、モノグラムの素材だということがわかる。たとえ素材が紙くずでも、高級ブランドのシンボルは揺るがないということか。いや逆に、ブランド信仰の虚構性を揶揄しているとも取れる。どう受けとめるかは見るもの次第だが、展示が鮮やかに決まっていたことだけは確かだ。

2010/02/05(金)(小吹隆文)

中田有香 展 うすごおり PATTERN3

会期:2010/02/03~2010/02/14

iTohen[大阪府]

植物の枝、葉、花びら、実などを素材にして、平面作品やオブジェを制作する中田有香。通常こうした素材を扱う作家はネイチャー指向に走りがちだが、彼女の場合、むしろグラフィカルな素養が前面に出てくるのがユニークだ。珍しいタイプの作家なので、この路線のまま突き進んでほしい。前回の個展で彼女と話した際、仕上げがやや雑だと指摘したのだが、本人が未だにその言葉を気にしていることが判明。あらら、悪いこと言っちゃったかな。言葉にはもっと注意を払わねば。

2010/02/03(水)(小吹隆文)

アマノ雅広 写真展「87th & Lexington - The viewpoint from a window / Snow」

会期:2010/01/09~2010/01/31

TANTO TEMPO[兵庫県]

積雪したニューヨークの街角で、カフェの窓越しに行き交う人々を定点観測した写真作品。2003年に撮影されたものだ。過去に数点の作品を見たことはあったが、全作品を見たのは初めて。以前は、窓の意味や内と外の関係、見る見られるの関係など深読みをしていたのだが、シリーズを通して見るとむしろ小粋な短編小説の趣が強い。一部だけを見て前のめりになっていた自分に気付かされた。もちろん、作品の底流には写真論的なテーマも込められているのだろうが。

2010/01/30(土)(小吹隆文)

平(HEY!) 平成も二十歳を越えました

会期:2010/01/23~2010/01/31

元・立誠小学校[京都府]

変てこなタイトルの展覧会だと思っていたら、出品者11人の名前に必ず「平」の字が入っていることを発見。なんだ駄洒落じゃないか。出発点は駄洒落だが、それぞれがきちんと仕事をしていたので、展覧会としても十分楽しめた。仏様が授業を受けているインスタレーションを制作した鎌田祥平や、土器をモチーフにした作品を出品した綿引恒平など、元小学校というロケーションを意識した作品が目立ったのも印象的だった。ちなみに上記以外の出品者は、泉洋平、大久保vit's陽平、上硲一平、河合晋平、君平、佐野耕平、重本晋平、新岡良平、山田心平。キュレーターは唯一「平」がつかない奥田真希だった。

2010/01/27(水)(小吹隆文)