artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:レゾナンス 共鳴 人と響き合うアート
会期:2010/04/03~2010/06/20
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
人が生きていくうえで体験するさまざまな様相──生と死、喜び、悲しみ、愛、憎しみ、笑い──を浮かび上がらせた現代アート作品を紹介。国内外20作家の120点が出品される。海外組はキーファーやロスコ、ライプなど既に名声を隔離した巨匠が多いのに対し、国内組は西尾美也や梅田哲也、伊藤彩らニューカマーを数多く起用しているのが興味深い。また、欧米のアートマーケットで大人気を博しているラキブ・ショウの参加も注目だ。
2010/03/20(土)(小吹隆文)
エトリケンジ個展 VANISHING
会期:2010/03/04~2010/03/31
BAMI gallery[京都府]
人体にスチールネットを当てて成型した少女の人型オブジェ8点と、ドローイングやスケッチ類を出品。遠目には半透明に見えるオブジェははかなくも空虚で、抜け殻や陽炎が連想される。それらは都市に暮らす匿名の人間の輪郭であり、身体性を喪失した情報化社会における人間の姿を暗示しているそうだ。『攻殻機動隊』の草薙素子や『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイとリンクさせる人が多いとも聞いたが、それも納得だ。
2010/03/17(水)(小吹隆文)
武井伸吾 写真展「星宙夜想」
会期:2010/03/16~2010/03/21
NADAR/OSAKA[大阪府]
「天体写真」ならぬ「星景写真」というジャンルがあることを本展で初めて知った。星景写真とは、星空と風景の両方が写った写真を指すそうだ。山あいの湿原で撮った星空は山の切れ目から明るい光が覗く。向うに町があるのだろうか。夜の富士山と星空の写真にはふもとの人工光がしっかり捉えられており、星空との不思議な共演に目が釘付けになる。なかには昼夜の区別がつかない作品もあるし(マグリットを超えた?)、とてもワンショットで決めたとは思えない構図の作品もある。とにかく驚き。こんな世界があったとは。
2010/03/16(火)(小吹隆文)
三嶽伊紗 微分する眼
会期:2010/03/06~2010/03/27
ギャラリーヤマグチクンストバウ[大阪府]
展示室の壁際に白いカーテンをかけ、向う側で灯る光がうっすらと透けて見える《カーテンの向こう/白いカーテン》、13年前に描いた絵画の表層を削り取り、同じ色で改めて塗り直した《アカイ絵》、雪の日に定点観測した映像を何層も重ねて投影しした《雪1》《雪2》などの作品を出品。いずれも、日々の生活で得られる微細な感興や、忘れていた記憶がうっすら甦って来る時の何とも言い難い感覚を造形化したらこうなるのか、という感じの作品。言語化される以前の感覚を捉える鋭敏な感覚はこの人ならではのものだ。
2010/03/12(金)(小吹隆文)
展示の展示 豊嶋秀樹の仕事について
会期:2010/03/09~2010/03/20
OZC GALLERY+CAFE[大阪府]
クリエイティブ・ユニット「graf」の設立メンバーであり、現在は「gm project」として活動している豊嶋が、珍しく本人名義の個展を開催。会場に入ってみると彼自身の作品らしきものはなく、過去の奈良美智との協同作業などを記録した映像が流れるのみ。ほかは会場とゆかりのある作家の作品が少々展示されているぐらいだ。頭の中を「?」が駆け巡る。「これは大コケの展覧会ではないか」と。しかし会場をよーく見ると、至る所に付箋が貼ってある。そこには豊嶋によるメモ書きの数々が。これこそが本展のキモ。豊嶋が作品をつくるのではなく、彼の仕事のドキュメントをするのでもなく、会場と作家による交感の過程そのものが展覧会として提示されているのだ。非常に珍しいタイプの展覧会だが、場と人の関係を見せる新たな方法論と成りうるのではないか。
2010/03/11(木)(小吹隆文)