artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

浅田政志 写真展 Tsu Family Land

会期:2010/04/17~2010/05/30

三重県立美術館[三重県]

家族でコスプレしてさまざまな職業や状況の写真を制作する浅田政志が、故郷の美術館で大規模個展を開催した。館内をレジャーランドと仮定し、作品だけでなくアトラクション的要素やショップ、記念撮影コーナーまで設けたサービス精神たっぷりの内容で、もちろん展示室内の撮影もOK。溢れる家族愛に感化されるのか、地元への愛に満ちているからか、観客の誰もが優しい表情で展覧会を楽しんでいる。型破りな展示構成はもちろん、地元市民との距離を縮めるという意味でも、公立美術館の企画として出色と言えるだろう。

2010/05/03(月)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00008491.json s 1215020

赤松玉女 個展

会期:2010/04/27~2010/05/09

ギャラリーすずき[京都府]

滲みを生かした画風で、魅惑的な女性たちを描いている。おそらく海外のファッション誌や映画誌がネタ元であろう。刹那的なポップアイコンが永遠性を宿した肖像画として転生するのが興味深い。肖像画という古色蒼然としたジャンルを洗練されたスタイルでよみがえらせた点も評価されるべきだ。会場の片隅にはわが子と共作したドローイング作品も展示されていた。肖像画とはまったく違う雰囲気だが、不思議なバランスで釣り合いがとれていた。

2010/04/28(水)(小吹隆文)

徳島LEDアートフェスティバル2010

会期:2010/04/17~2010/04/25

徳島市ひょうたん島一帯[徳島県]

JR徳島駅がある市内中心部の中州、通称「ひょうたん島」の河岸と周辺地区に、LEDを用いたアート作品が多数展示された。作品は、招待作家4人を含む27点。会期中はイベントも多数開催され、周遊船の就航やランドマークのライトアップもあって、市中の夜が華やかに演出されていた。正直、招待作家以外は玉石混交で、なかには稚拙な作品もあった。しかし、日が沈むにつれ河岸に市民が集い、思い思いに夜景を楽しむ様子を見ていると、市民のお祭りとしては上出来なのかなとも思う。今後も継続されるのか定かではないが、じっくり育てていけば市民に愛される風物詩的なアートイベントになるかもしれない。

2010/04/24(土)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00008304.json s 1215018

堀尾貞治 展

会期:2010/04/17~2010/05/15

ギャラリーヤマキファインアート[兵庫県]

画廊に入ると、いつもの堀尾展とはまったく異なる状況に驚かされた。作品ともガラクタともつかない物体で雑然としているはずの会場が、すっきりとスタイリッシュにまとめられていたのだ。どうやら画廊側の提案に堀尾が乗ったらしい。他人のディレクションに身を任せたらどんな世界が現われるのか、彼自身もそんな機会を望んでいたのかもしれない。普段のフリーダムな堀尾ワールドがお好みのファンは複雑な気持ちかもしれないが、私は大いに気に入った。なんだ堀尾さん、正装もきちんと着こなせる人だったんですね。

2010/04/23(金)(小吹隆文)

村林由貴 個展「溢れ出て止まない世界」

会期:2010/04/10~2010/04/25

GALLERY RAKU[京都府]

全紙サイズの紙を20枚ほど貼り合わせた巨大な絵画が天井と壁に3点。残りの壁には過去の代表的な作品が展示され、床では大作が公開制作でまさに進行中だった。画風は、具象的モチーフによる幻想的な世界からストロークを強調した抽象画へと移り、現在は花や触手を思わせる形態が無限増殖するスタイルに。大学生にして回顧展とは気が早いかもしれないが、アイデアとモチべーションが怒涛のように湧き出てくる状態であることはよくわかった。

2010/04/21(水)(小吹隆文)