artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

上田順平 展 パート1「帰ってきたウラシマピーターパン」、パート2「カンゲン」

イムラアートギャラリー[京都府]

会期:2010/04/03~2010/04/10、2010/04/13~2010/05/01

会期前半は「帰ってきたウラシマピーターパン」と題し、08年に岡本太郎現代芸術賞展で岡本敏子賞を受賞した《ウラシマ・ピーターパン》を、受賞時の状態に似せて展示。後半の「カンゲン」は、これまでの過剰な装飾性とは一線を画する埴輪のような新作陶オブジェ5点が発表された。今秋から1年間のメキシコ留学に旅立つ上田は、さらなる飛躍のために自分をリセットするつもりで新作を発表したのかもしれない。一時の成功に安住せず、果敢に前進する上田の姿勢に共感した。

2010/04/14(水)(小吹隆文)

レゾナンス 共鳴 人と響き合うアート

会期:2010/04/03~2010/06/20

サントリーミュージアム[天保山][大阪府]

生と死、喜び、悲しみ、笑いなど、人間の根源的な感情を刺激する作品ばかりを集めた展覧会。国内外の20作家が出品しているが、海外組がキーファーやロスコなど大御所が多いのに対し、国内作家は小泉明郎や金氏徹平など若手が中心だった。これには年内で休館するサントリーミュージアム[天保山]から日本の若手作家に贈るエールの意味があるという。テーマ主義で作品を駒として扱うのではなく、個々の作品との対話を重視しているのも本展の特徴。まるでミュージシャンがアルバムの曲順に工夫を凝らすように、本展では作家の配置にこだわりが感じられた。特に前半の流れは秀逸で、イケムラレイコとマルレーネ・デュマスで静かに始まり、ポール・マッカーシーで転調した後、ラキブ・ショウと小谷元彦でスピリチュアルな空気感を作り出し、伊藤彩で一息ついてからジャネット・カーディフの《40声のモテット》で一気に高揚の頂点へと持って行かれた。後半は線的な流れではなく、テイストの違う作品を散りばめられた万華鏡的な世界が広がっていた。ビートルズの『アビィ・ロード』のA面とB面が逆になった感じとでも言えばご理解いただけるだろうか。こんな見方が果たして正しいのか自信はないが、1枚のアルバムを聞く感覚で展覧会を体験するのも悪くないものだ。

2010/04/09(金)(小吹隆文)

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舟田亜耶子 展

会期:2010/04/06~2010/04/14

ギャラリ16[京都府]

3種類の写真作品を出品。うち2つはレンチキュラーシートを用いたもので、ギャルたちを曼荼羅のように配した作品と、5人から10人の顔を重ねたポートレイトだった。もうひとつはグラビアアイドルのようなポーズを取った少女たちの顔をスクラッチシートで覆っていた。私が秀逸だと思ったのはポートレイト作品。現実と仮想空間を自在に使い分け、TPOに応じてキャラクターを使い分ける現代人の姿が的確に描写されていたからだ。舟田は今回が初個展だが、幸先の良いスタートとなった。

2010/04/07(水)(小吹隆文)

きょう・せい 第1期

会期:2010/04/02~2010/04/25

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

京都市立芸術大学が市内中心部に学外ギャラリーをオープン。そのこけら落としは、同校出身の若手たちによるグループ展だった。内容的には詰め込み過ぎの感もあったが、オープニングゆえ祝祭気分を優先したのだと好意的に解釈しておこう。今後、この新ギャラリーを舞台に重要な展覧会が開催され、注目の新人たちが巣立っていくことを期待する。

2010/04/07(水)(小吹隆文)

片山雅史 展

片山雅史 展─螺旋/風景
会期:2010/04/03~2010/05/01
ギャラリーノマル[大阪府]
片山雅史 展─風景/網膜
会期:2010/04/05~2010/05/01
2kw gallery[大阪府]

07年に大阪で開催した個展では、円形のキャンバスに鮮やかな色彩で描かれた絵画約1,000点を壁一面に配置していた片山。今回2会場で発表したのは、以前の作品とはまったく違うモノトーンの線描画だった。ギャラリーノマルでの作品は、生気に満ちた曲線が主体。一方、2kw galleryの作品は直線が主体で古典絵画の構図を借りたものもあった。片山はひとつのシリーズを時間をかけて追及していくタイプの作家だ。滅多にない作風の大転換期に立ち会えたのはラッキーだった。

2010/04/06(火)(小吹隆文)