artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
TASTING ART EXHIBITION
会期:2010/03/03~2010/03/14
阪急百貨店メンズ館[大阪府]
百貨店とアートが手を組む試みはバブル期にしばしば見られたが、不況の昨今はとんと御無沙汰である。そんな状況下で珍しく開催されたのが本展。男性向けのショップが並ぶ阪急百貨店メンズ館の地下1階から地上4階までの各フロアに、約60作家、約100点の作品が展示された。展示方法は平面作品をイーゼルにかける形式が多く、正直取ってつけた感は否定できない。もし今後も継続するなら展示方法には改善の必要がある。そんななか、まるで最初からそこにあったかのごとくマッチしていたのが越中正人と岡本啓だ。2人の展示に同種のイベントの可能性を感じた。傍から見ても交渉事が多く大変そうな企画だが、今後も継続されることを望む。
2010/03/09(火)(小吹隆文)
かなもりゆうこ展 物語─トショモノ
会期:2010/03/08~2010/03/27
ギャラリーほそかわ[大阪府]
親密な友人たちとの交流を撮影し、ドキュメントとフィクションの中間的な映像作品をつくってきたかなもりだが、新作はやや映画よりで、ストーリー性のある物語が綴られていた。映像は壁面と見開いた書籍に投影されており、作品中に登場する衣装や書籍が展示室に配置されている。また、作品の一部が本展会場で撮影されていることもあり、映像空間と現実空間の境界が曖昧なのだ。これまでの作品がドキュメントとリアルの境界を彷徨っていたとしたら、本作はスクリーンの向こう側と手前側の往還がテーマである。かなもりはまたひとつ新たな彼女独自の文法を獲得した。
2010/03/08(月)(小吹隆文)
眠る為に 中山恵美 展
会期:2010/03/04~2010/03/30
オソブランコ[大阪府]
2年前の個展から花びらを画材として用いるようになった中山。絵具で描かれたピンボケの風景と点描のような花びらのコントラストにより、現実と非現実の狭間にいるような不思議な絵画空間が生み出される。新作で描かれているのは、森の中の邸宅と、野火がついた草原と、顔面をクローズアップした自画像。なかには火がついた家や草原もある。燃える家は棺桶のメタファーらしく、展覧会全体に死のイメージが色濃いのも印象的だった。
2010/03/06(土)(小吹隆文)
笹岡敬 展 Reflex 2010/WATER 2010
- Reflex 2010
- 2010/03/02~2010/03/07
立体ギャラリー射手座[京都府] - WATER 2010
- 2010/03/06~2010/03/19
CAS[大阪府]
笹岡敬が京都と大阪で2週連続個展を開催。京都の作品は、赤、黄、青のパトライト(回転灯)がランダムに速度を変化させながら発光・回転するするインスタレーションで、ミニマル音楽にも似た麻痺的な刺激が得られるものだった。大阪の作品は、天井から青と黄の電球が垂らされ、床には満面の水をたたえた円筒のガラス容器が置かれているというもの。床に映り込むガラス容器越しの屈折光や、壁面に映る観客の影が美しかった。タイプこそ違えど、光学原理を応用して静謐な空間を作り上げた点で両作品は共通する。また、最小の装備で大きな効果を引き出す点も同様だ。笹岡の冴えた手腕を再確認した。
2010/03/04(木)・2010/03/08(月)(小吹隆文)
キリコ個展「旦那 is ニート」
会期:2010/03/01~2010/03/06
Port Gallery T[大阪府]
8年間の交際の後結婚した夫がニートになり、離婚へと至る過程を捉えた写真作品。スライドショー形式で上映された。夫婦関係が冷えていく過程では抜き差しならない局面もあったと思われるが、激情のシーンはなく抑えた描写が淡々と続いた。自身が新たな人生を始めるための通過儀礼としてつくられた作品なのかもしれない。本作は'09年の「写真新世紀」で荒木経惟に高く評価され佳作に入選したそうだが、文字通りの私写真なのでそれも納得である。なお、本展は4月に東京の企画ギャラリー明るい部屋でも開催される。
2010/03/01(月)(小吹隆文)