artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
神戸ビエンナーレ2009
会期:2009/10/03~2009/11/23
メリケンパーク、神戸港会場、兵庫県立美術館、三宮・元町商店街[兵庫県]
2007年に第1回が開催された神戸ビエンナーレ。その売りは、貨物コンテナを大量に持ち込んで展示会場に流用するという、港町・神戸を意識したプランだった。しかし、引きが取れず照明設備が劣るコンテナでは、インスタレーションや映像ならともかく、絵画や立体をまともに見ることは難しい。そうした設備面での悪条件と、さまざまなレベルの作品が混在した配置もあって、多くの課題を残す結果となった。今秋の第2回では、招待作家を兵庫県立美術館に集中させ、主会場のメリケンパークと連絡船で結ぶ方式を採用。さらに海上でも作品展示を行ない、スケールとグレードの向上を図っている。メリケンパーク会場で昨年同様コンテナが用いられるのは、筆者としては残念。しかし、兵庫県立美術館と海上で質の高い展示が行なわれるなら、前回以上の成果が期待できる。また、街中の三宮・元町商店街と美大生・専門学生による共同企画も予定されており、地元との密着が強く意識されている点にも好感が持てる。主催者の構想が額面通りに機能して、見応えのある催しになることを期待する。
2009/09/20(日)(小吹隆文)
ある風景の中に
会期:2009/09/15~2009/10/18
京都芸術センター[京都府]
日頃見慣れた風景を改めて見つめ直すことで、何かしらの発見を促す作品を集めた展覧会。キュレーターの安河内宏法はその方法を2種類に分類。風景のなかに元々何があるのかを気付かせる作家として岡田一郎、鈴木昭男、藤枝守を、馴染みやすい物や音と自分との関係を操作する作家として、梅田哲也、矢津吉隆、ニシジマ・アツシを招いた。いずれも質の高い展示を見せてくれたが、筆者が最も感銘を受けたのは梅田哲也のインスタレーション。ワークショップルームという、展示には向かない空間を逆手にとり、一体どこまでが作品でどこからが普段の室内なのかわからないマジカルな空間を創出させた。また、鈴木昭男の出世作である、大量の空き缶を階段から落とすパフォーマンスの再現(観客自身の行動により再現される)も憎い展示だった。一方、ニシジマ・アツシと藤枝守の展示には注文がある。作品解説が欲しいのだ。私はボランティアスタッフの説明を聞くまでまったく見当違いの理解をしていた。同様の観客が少なからずいるはずだ。作品には魅力があるだけに、その点だけが惜しい。それにしても、最近の京都芸術センターの企画展は見応えがある。今後もこの好調を維持してもらいたいものだ。
2009/09/16(水)(小吹隆文)
大正期、再興院展の輝き
会期:2009/09/12~2009/10/25
滋賀県立近代美術館[滋賀県]
今では日本画壇の権威となった院展だが、再興した大正期には在野の立場で文展に挑んでいた事実を再認識した。展覧会は6つの章で構成されているが、速水御舟や小茂田青樹ら細密描写に長けた腕利きが揃う第三章「写実表現の追求」と、冨田渓仙、川端龍子、北野恒富らを紹介した第四章「個性の表現」に見応えがあった。また、酒井三良の作品を(恥ずかしながら)初めて知ったが、その類まれな個性にいたく感心した。在野の雄として官展に対抗した院展だが、そんな彼らの内部でも大正末期には権威化が始まっていたと聞く。いつかその経緯を扱った展覧会を見たいものだ。
2009/09/11(金)(小吹隆文)
土岐謙次 漆器展 捨てられないかたち
会期:2009/09/05~2009/09/19
GALLERY GALLERY[京都府]
スーパーマーケットなどで使われている包装用トレイを、脱活乾漆技法で漆作品として提示した。卵、納豆、豚バラ肉、なかには英国で見つけたマンゴー用のトレイという珍品も。漆黒の漆器に生まれ変わったそれらはいずれも美しく、高級感さえ漂わせている。日頃リサイクルごみとして消費されている物とはとても思えないほどだ。よくよく考えれば、トレイは厳密に設計されたプロダクト製品であり、美しくても何ら不思議ではない。土岐はその事実を改めて明らかにすると同時に、実用品という意味では伝統工芸とプラスチック製品が同列にあることをも示したのだ。
2009/09/08(火)(小吹隆文)
福村真美 個展
会期:2009/09/07~2009/09/19
画廊 編[大阪府]
琵琶湖と思しき湖畔の風景や学校のプールなど、水辺にまつわる絵画作品が並ぶ。中には湖岸の風景を鳥瞰で捉えた珍しい構図の作品も。青や緑の彩色がみずみずしく、広がりある風景が醸し出す解放感も心地よい。見る者のストレスを緩和するヒーリング効果を持つ作品だ。こういうのが家に1点あったらいいなと思う。
2009/09/07(月)(小吹隆文)