artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
川上大介 個展 [approach to sign]
会期:2009/09/29~2009/10/04
ギャラリー揺[京都府]
山中を歩き、獣道を見つけたら地面に板状の陶土を設置。1週間ほど後に回収し、動物の足跡や落ち葉が刻印された陶板として展示する。陶芸の一種とも、ランドアートの一種とも解釈できる珍しい作品だった。カテゴライズは不可能だが、その分未知の可能性に満ちた表現とも言える。テキストや映像で綿密に記録しておけば、ドキュメントとしても魅力あるものになるだろう。
2009/09/29(火)(小吹隆文)
名和晃平 展 Transcode
会期:2009/09/19~2009/10/17
ギャラリーノマル[大阪府]
動物のはく製などにガラスビーズをまとわせた「BEADS」シリーズの新展開が見られた。それらは、ガラスビーズで覆われたPCモニターに、インターネットから検索した名和自身の画像を写し出したものだ。今までの同シリーズは物質が分子レベルに還元されたかのごとき趣があったが、新作ではデジタルデータが対象になったということか。手法自体は従来通りなのだが、発想の豊かさと仕上がりの美しさは圧倒的だ。別室では、揺れ動く無数のドットが床一面に投影される《Dot-Movie》も発表。三半規管を直撃する刺激的な映像にやられてしまった。
2009/09/24(木)(小吹隆文)
hyper tension with uneasiness
会期:2009/09/22~2009/10/04
海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]
uneasinessとは、芦谷正人、岩澤有径、大澤辰男からなるアーティスト・グループ。その主体はあくまで個人であり、展覧会を通じて切磋琢磨する方法論としてのグループである。彼らの特徴は、流行にとらわれず王道的な絵画論の側に立った活動を続けていることと、毎回ゲストを招いてマンネリ化を防いでいることだ。今回はその拡大版ともいうべき大規模展で、美術館並みのサイズを持つ海岸通ギャラリー・CASO全室(5室)が用いられた。出品者は、彼らのほか、倉重光則、中川久、内山聡、勝又豊子(いずれも神奈川在住)の全8名。また、国立国際美術館の中井康之がテキストを寄せた。肝心の内容だが、作品、展示プランともに質が高く、ギャラリーのレベルを超えた充実ぶりであった。正直、無料で見せるのはもったいないと思ったほどだ。
2009/09/24(木)(小吹隆文)
自宅から美術館へ 田中恒子コレクション展
会期:2009/09/08~2009/11/08
和歌山県立近代美術館[和歌山県]
個人コレクターの収集品を一堂に展示する珍しい企画展。住居学者の田中は、最初は生活の質を向上させる手段として美術品の購入を思い立ったそうだ。しかし、ずらりと並んだ作品群は、研究対象よりもライフワークと呼んだ方がふさわしい。収集に際しては作家の知名度や人気よりも自身の好みを優先したらしいが、村上隆や奈良美智、名和晃平の初期作品を購入している事実からも、その上質な審美眼がうかがえる。美術コレクターとして至上の名誉とも言える本展。同好の氏からは、さぞや羨望(嫉妬?)の眼差しを向けられていることだろう。
2009/09/20(日)(小吹隆文)
アート&テクノロジー展 高橋匡太/疋田淳喜/吉岡俊直
会期:2009/10/23~2009/12/04
京都工芸繊維大学美術工芸資料館[京都府]
普段は建築やデザインの企画が多い京都工芸繊維大学美術工芸資料館で、珍しくアートの展覧会が登場。光を自在に操る作品で知られる高橋匡太と、マッドサイエンティスト風の世界観が持ち味で、少年少女科学クラブの活動でも知られる疋田淳喜、そして近年はCGを活用した映像や立体を制作している吉岡俊直という、理系心を刺激する(?)3作家が選ばれている。本展のもう一つの注目点は、キュレーターが平芳幸浩(元・国立国際美術館)だということ。彼が同大学に移籍して約1年半。ようやくお目見えする企画なのだから、期待も高まろうというものだ。
2009/09/20(日)(小吹隆文)