artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

マイ・アートフル・ライフ─描くことのよろこび─

会期:2009/07/17~2009/08/30

ギャルリ・オーブ[京都府]

正規の美術教育を受けることなく、老齢になってから筆を執った3人の作家、搭本シスコ、丸木スマ、石山朔を紹介。搭本と丸木は以前から有名だし、私も何度か作品を見たことがあるが、石山の作品を生で見たのは今回が初めてだった。いわゆるアール・ブリュットには具象的な作風が多いが、石山の作品は完全に抽象画。カラフルなストライプの上に渦を巻くタッチが重なった鮮烈なもので、500号の大作が多数ということもあって鮮烈な印象を受けた。抽象絵画でありながら、思念的というよりは描く喜びが前面に現われた作品があるなんて。その発見が嬉しい。

2009/07/28(火)(小吹隆文)

上阪伸之介 版画展[木とくさの名は]

会期:2009/07/28~2009/08/02

ギャラリーすずき[京都府]

天地約2メートル、左右約5メートルの巨大木版画が2点。どちらもクジラがモチーフになっている。壁に貼られた作品《暁》は、空中を浮遊するクジラの一部が都市や山脈、水鳥などに変容している。床の作品《木とくさの名は》では、クジラは島として表現され、手前の陸地で食物連鎖が繰り広げられている。悠久の自然に対する憧憬を巨大なクジラに託しているのは明らか。そこに木版画特有のやわらかい線や遊び心あふれるメタモルフォーゼが加わって、作品が教条的になるのを防いでいるのだ。心が解きほぐされるような大らかな作品を前に、外の猛暑をしばし忘れた。

2009/07/28(火)(小吹隆文)

美術の中のかたち──手で見る造形 藤本由紀夫 SHADOW─exhibition obscura

会期:2009/07/25~2009/11/29

兵庫県立美術館[兵庫県]

美術作品を触って鑑賞する本展。元々は視覚障害者を念頭に置いて始められた企画で、今年で20年の歴史を持つ。近年は現役作家と館蔵品のジョイントが売りになっているが、今回はサウンド・アーティストの藤本由紀夫が登場。自作のほか、ロダンとブールデルのブロンズ像、高松次郎の絵画、ルドン他の版画作品を組み合わせて展覧会を構成した。絵画や版画は触ることができず、本展本来の意図からずれているのだが、藤本の狙いは障害者と健常者の区別を取っ払って、「人が美術作品を理解するとはどういうことか」を根源的に問いかけることにあった。敢えて薄暗い部屋に作品を置くことで、ホワイトキューブ空間では絶対に得られない作品との新たな接触を演出したのだ。本展の歴史のなかでは明らかに異端だが、美術館に通い慣れたディープなファンほど考えさせられる企画である。

2009/07/25(土)(小吹隆文)

水都大阪2009

会期:2009/08/21~2009/10/12

大阪市・中之島周辺[大阪府]

大阪・中之島を主会場に、高度成長期を経ていったんは途切れかけた水辺と市民の関係を取り戻そうとする複合イベント。アーティストがかかわるものでは、ヤノベケンジによるアート船とアートツアー「トらやんの大冒険」、KOSUGE1-16、藤浩志、パラモデルら多数の作家が連日ワークショップを繰り広げる「水辺の文化座」、元永定正&中辻悦子、河口龍夫、今村源らが建築遺産を会場に行なう作品展示がある。全体のなかでワークショップが占める比率が高く、見るよりも積極的な参加が求められるのが特徴だ。

2009/07/15(水)(小吹隆文)

ART OSAKA 2009

会期:2009/08/21~2009/08/23(8/21はプレビュー)

堂島ホテル[大阪府]

大阪・西梅田の堂島ホテルで開催されるアートフェア。2002年に始まった当初の会場はベイエリアだったが、交通至便な現在地に移った2007年より認知度が一気に広まった。今年の参加は国内とアジアの47画廊。ホテルの4フロアを会場とし、客室ごとに参加画廊が展示・販売を行なう。会期中には数々のイベントも予定されている。決して大規模ではないが、コンパクトにまとまっている分作品とじっくり向き合えるのが長所である。なお、今年から初日はプレビューとなり、招待客のみの入場となるのでご注意を。

2009/07/15(水)(小吹隆文)