artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
薮内一実 展
会期:2009/08/31~2009/09/12
信濃橋画廊[大阪府]
壁面に掛けられたシャープな造形物には、小さな台座のような空間があり、機械部品がちょこんと置かれている。サイズは決して大きくないが、まるでそれ自体が一つの風景、もしくは舞台セットのようだ。見る者の想像力を刺激して、ひとつの世界を構築させる力を持っているのだろう。制作にあたっては、電気屋街などでの機械部品との出合いが重要らしい。機械部品を眺めるうち、背後の形が見えてくるそうだ。白いシャープなフォルムの立体は一見石膏に見えるが、実はセメントで作られている。石膏だと望む質感が出ないらしい。独特の色むらと、ところどころに見受けられる崩落の痕跡が、作品にある種の余情を与えている。
2009/08/31(月)(小吹隆文)
浜寺の家 住宅完成見学会+小さな作品展
会期:2009/08/29~2009/09/06
浜寺の家[大阪府]
建築家の中尾彰良が設計した個人宅が、堺市の閑静な住宅街に完成、お披露目会が催された。ユニークなのはその内容。邸内に10人の作家による絵画、家具、絵本、詩などが配置され、住宅展示会+展覧会として公開されたのだ。ちなみに作品は施主のコレクションでも中尾のコレクションでもなく、この催しのために集められたとのこと。他人の家を覗くのは興味深いものだが、建築家が設計した建物ならなおさらだ。テレビ番組の渡辺篤史の気持ちになって、隅々まで舐めるように観察させてもらった。しかも美術展まで行なわれているのだから、その面白さは何倍にも膨らむ。他の建築家も同様の催しを行なっているのだろうか。だとしたら、今後もどんどん出かけたいものだ。
2009/08/29(土)(小吹隆文)
長谷良樹 展《THE HAPPINESS WITHIN》
会期:2009/08/15~2009/08/29
ギャラリーヤマキファインアート[兵庫県]
ニューヨークのイーストビレッジにあるHIVや薬物中毒者の施設で、アートセラピーとして撮影された写真作品。施設に入所している人々のポートレイトと、彼らの自筆テキストがセットで展示されている。困難な状況下でもポジティブに生きる人間の姿に心打たれた。長谷と被写体が心を通わせるまでには相当の時間と忍耐が必要だったと察せられるが、その苦労は見事に印画紙上に昇華されている。
2009/08/28(金)(小吹隆文)
ART OSAKA 2009
会期:2009/08/21~2009/08/23
堂島ホテル[大阪府]
今年の『ART OSAKA』は、初めてプレビューデー(21日)を設けるなど、昨年の課題を生かした改善点が見受けられ、着実な進歩がうかがえた。昨今の不況に配慮してか、各画廊の出品物は小品が多い印象。手堅い判断とも言えるが、ある関係者からは「美術館クラスの作品を求めるディープなコレクターには物足りないかも」との声も。単価の高い作品が少ないということは、数をさばかなければ利益が出ないということであり、そのあたりの吉凶がどう出たのかが興味深いところだ。つくづくアートビジネスは難しいと実感。
2009/08/21(金)(小吹隆文)
名和晃平 展 Transcode
会期:2009/09/19~2009/10/17
ギャラリーノマル[大阪府]
メゾンエルメス(東京)での個展が好評を博している名和晃平が、地元関西でも新作展を開催。彼は素材との戯れや実験のなかから作品を煮詰めていくことが多いが、本展では映像作品《Dot-Movie》など新たなメディアを用いた作品が予定されている。今後の方向性を窺う意味でも注目の機会となるだろう。
2009/08/20(木)(小吹隆文)