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小吹隆文のレビュー/プレビュー

自宅から美術館へ 田中恒子コレクション展

会期:2009/09/08~2009/11/08

和歌山県立近代美術館[和歌山県]

現代アートのコレクターとして有名な田中恒子氏のコレクションが、和歌山県立近代美術館で公開されることになった。大阪教育大学で住居学を研究していた彼女にとって(現在は同大学名誉教授)、美術作品の収集は生活を豊かに彩る一助であり、自身の研究の実践とも言える。そのコレクションは100作家以上&1,000点以上に達し、文字通り“現代美術と一緒に暮らす”日々を営んできた。巨匠の作品を買い集めるのではなく、無名の新人でも自身の審美眼で収集するのが田中流。一コレクターから見た現代日本美術史とはどういうものかに興味が募る。

写真:奈良美智《どんまいQちゃん》1993(平成5)木、彩色、123.0×37.5×43.7cm

2009/08/20(木)(小吹隆文)

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ウィリアム・ケントリッジ──歩きながら歴史を考える そしてドローイングは動き始めた……

会期:2009/09/04~2009/10/18

京都国立近代美術館[京都府]

ドローイングを部分的に描き直しながら1コマずつ撮影したアニメーション作品などで国際的に高い評価を受けているウィリアム・ケントリッジの日本初個展。初期の代表作《ソーホー・エクスタインの連作》(1989~2003)から最新作《I Am Not Me, the Horse Is Not Mine》(2008)までの映像作品19点(インスタレーション3点を含む)と、素描36点、版画64点により構成。初日にはケントリッジ自身によるレクチャーとパフォーマンスも予定されている。

写真:《I Am Not Me, the Horse Is Not Mine 俺は俺ではない、あの馬も俺のではない》2008年 ©the artist

2009/08/20(木)(小吹隆文)

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高橋涼子 個展「HAIR(=)COMPLEX」

会期:2009/09/02~2009/09/26

studio J[大阪府]

人毛を用いたオブジェや刺繍の作品を発表し続けている高橋の新作展。美と同時に呪術的なイメージを併せ持つ毛髪は、彼女にとってコンプレックスを克服するための執着すべき部位であった。そんな彼女の思いを具現化した新作では、コルセットや剣山、鳥かごをテーマにした立体と、ペインティング、ドローイング、写真などの平面作品を展覧。装飾、矯正、拘束をキーワードに、彼女ならではのフェティッシュな世界が展開される。

2009/08/20(木)(小吹隆文)

宮永亮「ウォンジナ」

会期:2009/07/18~2009/08/29

児玉画廊[京都府]

今年と昨年に京都市立芸術大学の制作展に出品された作品《ウォンジナ》(2009年)と《Rainy Letter》(2008年)が展示された。機材や環境が学内展示より大幅に向上しているためか、作品のグレードがワンランク上がった気がする。特に、水面や空、太陽、絵具のしたたりなどの映像を天地左右反転させたりスピードを変えながら巧みに組み合わせ、オリジナルの音楽が付けられた《ウォンジナ》は、黙示録的な荘厳さすら感じられる秀作だ。それにしても、もっと早くに見ておくべきだった。自分の腰の重さに大いに反省。

2009/08/18(火)(小吹隆文)

津田直 果てのレラ

会期:2009/07/11~2009/08/16

一宮市三岸節子記念美術館[愛知県]

北海道の礼文島と沖縄の波照間島を取材した新作「果てのレラ」を中心に、「七曜」「彼方の星」「盥(たらい)星図」などを組み合わせて構成された。日本の最北端と最南端を結ぶことで自身の座標軸を確認しようとする彼の態度は、近代以前の宇宙観をテーマにした「七曜」や、線香で穴をあけた和紙で星空を表現した「彼方の星」と「盥星図」と共鳴し、思索する写真ともいうべき津田独特の作品世界を濃厚に形作っていた。コンパクトながら過不足なくまとめられており、見終わった後に残る清涼な余韻も心地よい。

2009/08/15(土)(小吹隆文)