artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

川端朗子 展 Mixed colors

会期:2009/07/06~2009/07/18

信濃橋画廊 apron[大阪府]

絵具の塊を紙の上に何重にも盛り、紙を傾けるなどして垂らした川端朗子の絵画作品。こうした制作法は決して新奇ではないし、同様の作品を過去に見た記憶もある。なのに彼女の作品が鮮烈な印象を残すのは何故だろう。色遣いの上手さや余白の生かし方といった技術面もあるのだろうが、その外連味のなさが見る者の心を打つというのが案外正解かもしれない。アール・ブリュットの優品に初めて出合った時と同種の感動を受けた。

2009/07/06(月)(小吹隆文)

多田ユウコ 空遊書画

会期:2009/06/30~2009/07/04

サードギャラリーAya[大阪府]

水泳の飛び込み選手を捉えた写真と、飛び込みを楽しむ人々を撮影した映像を展示。改めて見比べると選手と一般人の差は歴然だが、もちろん本展の目的はそんなことではない。人間が重力から解き放たれる一瞬を記録し、躍動する肉体の美しさや嬉々としてダイブに興じる人間の感情を定着させることがテーマなのだ。時に半身のみを狙うなどトリミングも効果的で、点数こそ少ないが印象に残る個展となった。惜しいのは会期が短いこと。若手対象の特別企画とはいえ、5日間というのはさすがに辛い。

2009/07/02(木)(小吹隆文)

岡林真由子 展「玻璃の町」

会期:2009/06/30~2009/07/05

立体ギャラリー射手座[京都府]

人気のない町並みを描いた岡林の絵画作品。彼女は目にとまった幾つかの風景を切り取り、1枚のキャンバス上に貼り合わせた「どこでもない町」を描いている。この方法だと物語や象徴をいくらでも取り込めるが、そちらに転ばないのが岡林の良いところ。どこか不自然な状態で停止した世界が、永遠の刹那を保ったままキャンバスに定着されている。ちなみにタイトルの「玻璃の町」とは、萩原朔太郎の小説『猫町』に登場する幻覚の町のことだ。

2009/06/30(火)(小吹隆文)

川瀬知代 展 一葉

会期:2009/06/24~2009/07/05

iTohen[大阪府]

植物や昆虫、海の軟体動物を思わせるシルエットを、みずみずしい色彩で描いた絵画作品。作品の多くは切り抜かれており、マティス晩年の切り絵と相通じるところも。壁面の一隅には人間の顔をモチーフにした連作もあったが、こちらもバリエーションが豊かで目を楽しませてくれた。多分に装飾的な作品だが、こういうのが部屋にあったらきっと楽しいだろう。シリアスなアートも良いが、アクセサリーのように日常に寄り添う作品もまた必要である。

2009/06/26(金)(小吹隆文)

風能奈々展「誰がその物語を知る」「草上の想像」

会期:2009/06/19~2009/07/25

小山登美夫ギャラリー京都、TKGエディションズ京都[京都府]

今年3月の「VOCA」展に出品した大作など16点からなる「誰がその物語を知る」と、20センチ角の小品108点の「草上の想像」。これだけの量の作品をわずか半年間で、しかも質を落とすことなく描き切ったことに恐れ入る。作品の世界は多分に彼女の内面(記憶や夢想)を反映したものだが、それだけに完成度が少しでも下がれば陳腐な独り遊びに堕してしまう。一貫してテンションを保ち続けたその精神力こそ、まずは称賛されるべきであろう。聞いたところによると、それこそ昼夜分かたず描き続けたので彼女自身も夢か現か判然とせぬ夢遊病的状態になったそうだが、そこまで自分を追い込んだことが作品のリアリティーにつながっているのかもしれない。

2009/06/24(水)(小吹隆文)