artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

トム・フリードマン展“Not Something Else”

会期:2009/03/28~2009/05/02

小山登美夫ギャラリー京都[京都府]

500枚のドローイングを圧倒的なスピードで見せるアニメ作品《Ream》が鮮烈。見る者に考える暇を与えず、意味や解釈を加える以前の「体験」を味わわせてくれるからだ。自分の顔写真をくしゃくしゃに丸めたり皺をつけた《I am not myself》と、緑色の巨大なモンスター《Green Demon》は単純に笑えた。そして極めつけは、スタイロフォームの小さな球を無数に用いた《Island》。小さなピースは生物や社会を構成する単位を示しているようだが、関西出身の私には巨大なネギ焼きに見えてしょうがなかった。

写真:Tom Friedman, Island (2009)Styrofoam and Paint 97.5x95x95cm

2009/03/27(金)(小吹隆文)

今井久美 写真展「カムフラージュ」

会期:2009/03/24~2009/03/29

アートスペース虹[京都府]

制服姿の女子高生たちを真正面から撮影した写真シリーズを出品。画一的な制服と、流行の着こなしや携帯電話のストラップに見られるささやかな自己主張を通して、日本人の集団意識と個性の関係性が滲み出る。今井は、制服が欠点や自身のなさをカムフラージュしてくれる都合よさと、制服により自分の本音さえ見えないことにして生きている(ように見える)彼女たちに興味を覚えたのだという。制服を巡る相反・補完関係は女子高生に限った話ではないので、今後対象を広げていけば今より更に深みのあるテーマが見つけられるかもしれない。

2009/03/24(火)(小吹隆文)

苅谷昌江 個展 Screen

会期:2009/03/18~2009/04/25

studio J[大阪府]

京都での「now here,nowhere」、東京での「VOCA展」と出展が相次いだ苅谷が、間髪をいれず個展を開催(と言っても、先に個展が決まっていたのだが)。新作は、映画館と思しき場所にさまざまな猿たちが座っていて、スクリーンがあるべき場所には密林が広がっている、というもの。いかにもストーリーがあり気だが、説明的な要素は見当たらず、見る者それぞれが自分なりの解釈を要求される。むしろ、絵から滲み出る不気味で不安定な感触を味わうこと自体が彼女の意図なのかも。床に置かれた裸電球と鳥のシルエットも相まって、空間全体が苅谷のトーンに染まっていた。

2009/03/19(木)(小吹隆文)

千家十職×みんぱく

会期:2009/03/12~2009/06/02

国立民族学博物館[大阪府]

千家十職とは、茶事全般の道具(茶碗、窯、表具、指物など)を作って来た十の家のこと。300年から400年を超える歴史を持ち、当代で11代から17代を数える。本展では、彼ら十職が作り出してきた名品の展示に始まり、十職の目で選ばれたみんぱく(国立民族学博物館)収蔵品と、収蔵品にインスパイアされた十職の新作との共演、みんぱく側が十職の仕事を10の動詞に当てはめ、その分類に応じてセレクトした収蔵品展示が行なわれた。アルチザンとアカデミズムのコラボレーションとでもいうべき異色企画だが、収蔵品に新たな価値を与える手法としてとても斬新だ。

2009/03/12(木)(小吹隆文)

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鎌田仁 展

会期:2009/03/10~2009/03/22

ギャラリーはねうさぎ[京都府]

西洋の古典名画を木彫作品に起こしてしまう鎌田。前回の個展ではボッティチェリの《ビーナスの誕生》が印象的だったが、今回彼が選んだのはフィリポ・リッピの《受胎告知》に登場する天使。その姿を驚くべき細密さで彫り出したのだ。また、古典名画の人物に現代の衣服を着せた作品も初出品されたが、こちらはまだ煮詰まっていないようにも思われた。この新展開を今後どう発展させるのかが気になる。

2009/03/10(火)(小吹隆文)