artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

柴垣美恵 展

会期:2009/03/10~2009/03/15

ギャラリーすずき[京都府]

親しい友人たちを描いたポートレイト作品と、静物や風景を描いた作品をバランスよく配置。空間から漂うくつろいだ雰囲気が心地よい。日本画の顔料とアクリル絵具を併用する柴垣だが、特に絵具の滲ませ方がうまい。また、描き過ぎず省略し過ぎずの塩梅も的確で、久々に理屈抜きで絵を楽しめた。

2009/03/10(火)(小吹隆文)

寺島みどり 見えていた風景「森」

会期:2009/03/09~2009/03/28

ギャラリーDen[大阪府]

水平線を基調とした抽象絵画を描いていた寺島だが、前回の個展から動的なストロークが出現して変化の予兆が見えていた。今回の新作ではそのストロークが前面に現われ、色使いも大きく変化している。作風の激変になかなか慣れなかった私だが、初日のパーティで2時間近く会場にい続けるうち、徐々に絵に対する印象が変わってくるのを実感した。それが何なのかはまだ漠然としているのだけど、幸い彼女はこの後東京と京都で連続個展を開催する。ゴールデンウイークに京都で行なわれる個展で、そのモヤモヤを解決したい。

2009/03/09(月)(小吹隆文)

now here, nowhere

会期:2009/03/04~2009/03/22

京都芸術センター[大阪府]

現実の断片をモチーフとしながら、現実とは異なる層を垣間見せたり、作品を見る眼差しそのものを問う作品が紹介された。出品作家は、苅谷昌江、中居真理、馬場晋作、藤井俊治、前田朋子、水木塁の6名。いずれの作品もレベルが高く見応えがあったが、とりわけ印象深かったのは水木塁の《Ripe of color ♯Narcussus》。紙焼き写真を漂白剤の入った液体に入れ、印画紙に定着していたイメージが剥離する瞬間をとらえた写真作品で、イメージがそれのみで存在する刹那の美を見事に捉えていた。

2009/03/08(日)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00001221.json s 1202673

インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常性の美学

会期:2009/03/07~2009/05/10

サントリーミュージアム[天保山][大阪府]

「インシデンタル(日常的な、取るに足らない物事)」をキーワードに選んだ17作家の作品を展覧。宮島達男やウォルフガング・ティルマンスといった有名作家から、ニューカマーの横井七菜までが選ばれており、ジャンルもバラエティ豊か。現代アートの多様な魅力を伝える意図が強調されていた。私にとっては、さわひらき、横溝静、榊原澄人の作品を見られたのが収穫。木村友紀と田中功起の展示もいい感じだった。関西では美術館の現代アート展が明らかに不足しているので、こういう企画はどんどん増やしてほしい。

2009/03/07(土)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00000987.json s 1202672

唐仁原希 展

会期:2009/03/02~2009/03/07

番画廊[大阪府]

少女と鹿が合体した半獣半身のバンビーノ(美少女)たちの絵。果樹にたわわに実る果実が皆少女の顔をしている絵。カタツムリになった少女の絵。ミッフィーやハローキティを思わせる色使いで表現された口のない少女たちの絵。唐仁原が描く少女たちは皆、どこか窮屈な姿をしている。自身の内面に宿る少女性への憧憬と嫌悪がこのような形で表出するらしい。彼女は今春大学を出たばかり。伸びシロたっぷりなので、今後が楽しみだ。

2009/03/02(月)(小吹隆文)