artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
明るい無常観-LIGHT TRANSIENCE-
会期:2009/04/14~2009/05/10
京都芸術センター[京都府]
淀川テクニックと金子良/のびアニキの2組による企画展。淀テクは名古屋で行なったプロジェクトの記録映像とオブジェ2点を出品、金子/のびはこれまでの活動を映像、写真、テキスト、資料でコンパクトにまとめてインスタレーションとした。彼らの世界を貫くキーワードとして「無常観」が適当なのかは疑問だが、金子/のびは私が今までに見た彼の展示のなかで最上だった。微笑みつつ泣けた。
2009/04/15(水)(小吹隆文)
アガット・ド・バイヤンクール展 "My so-called life in Japan"
会期:2009/04/14~2009/05/02
YOD Gallery[大阪府]
アガット・ド・バイヤンクールは、滞在した国の印象を絵画作品や絵画によるインスタレーション作品に昇華させる。約2ヵ月半の日本滞在を経た今回の作品を見ると、蛍光系の鮮やかな色彩を駆使しつつも、淡白で内省的な印象を受ける。これが彼女が感じた日本なのか。少々意外だ。作品にはさまざまな言葉の断片も見受けられるが、最も目立つのは「WAKALIMASEN」。どんなシチュエーションでこの言葉を受け取ったのだろう。本人に聞けなかったのが残念だ。
2009/04/14(火)(小吹隆文)
杉本博司 歴史の歴史
会期:2009/04/14~2009/06/07
国立国際美術館[大阪府]
意味深なタイトルが付けられた本展。会場には本人の作品と収集物(化石、隕石、書籍、建築の残骸、仮面、考古遺物、宇宙食、美術品、etc...)が大量に持ち込まれ、美術と諸科学が巨大な渦を巻くような混沌とした空間が形成されていた。その渦の中で攪拌されるわれわれ観客は、否が応でも感性のツボを刺激され、まるで覚醒へと誘われるかのよう。それでいて、作品の配置でちょっとしたストーリーを作ったり、見立てを駆使するなど茶席のもてなしのような遊び心も。また、照明には細心の注意がはらわれており、国立国際美術館が普段とはまるで異なる空間に変身したことにも驚かされた。出品物全てが杉本の所有品ということも含めて、こんな贅沢な展覧会は滅多に見られるものじゃない。清濁併せのんだ大人が本気で遊んだらこうなるんだ、という稀有な一例であろう。
2009/04/13(月)(小吹隆文)
サイモン・リー・クラーク展
会期:2009/04/11~2009/05/16
CAS[大阪府]
世界中のさまざまな都市の地図を切り抜き、貼り絵のように組み合わせた平面作品を出品。一見イージーに見えるが、よく見ると地図の道路上のみをカットしており、街区は一切分断されていない。配色も絵柄にあった地点が選ばれている。相当な労作であり、確かな絵心がないと作れない作品だ。マティスの《ダンス》など、マスターピースから採られた画題も微笑を誘う。また、新聞紙の情報部分(記事、広告など)をことごとく切り抜いてフレーム部分だけを何層も重ねた平面作品も、皮肉が効いていてニヤリとさせられた。
2009/04/11(土)(小吹隆文)
OBSESSIONS 取り憑かれた情熱
会期:2009/04/10~2009/05/09
MEM[大阪府]
音楽家のジョン・ゾーンをゲストキュレーターに迎えた本展。関西ではこんな機会は滅多にないので、大層話題を集めてしまった。しかもギャラリーでライブまで行なわれたのだから、ファンにはたまらない。肝心の内容だが、彼がプライベートで収集している作家たちばかりということで、展示を通してジョン・ゾーンの芸術観が窺える趣向にもなっている(展示品=彼の所有物ではない)。どうやら彼は、コンセプチュアルな作品より直感的な作品、社会的な作品より情熱に突き動かされた作品を愛好しているようだ。日本ではあまり知られていない作家もおり、その点でも興味深かった。
2009/04/11(土)(小吹隆文)