artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
國府理の仕事と仲間たち
会期:2015/05/01~2015/05/30
ARTCOURT Gallery[大阪府]
昨年4月に急逝した國府理を偲んで、彼の作品15点と、彼と交流のあった仲間たちの出品物65点(作品37組、文章28名)から成る展覧会が開催された。筆者と國府の出会いは、彼が1994年に発表した《電動三輪自動車》にさかのぼる。その後も機会があるごとに作品を見てきたが、このように改めて彼の仕事を振り返る機会を得ると、やはり感慨を禁じ得ない。國府の作品は、前述した《電動三輪自動車》の他、《ROBO Whale》、《Sailing Bike》、《Parabolic Garden》などが展示された。それに花を添えたのが、仲間たちの65点である。國府理というアーティストが、どれだけ多くの人に愛され、影響を与えたかがよく分かる。今後は同輩や後輩のアーティストが、彼のスピリットを継承してくれるであろう。
2015/05/01(金)(小吹隆文)
土田ヒロミ写真展 「砂を数える」
会期:2015/04/25~2015/06/07
Gallery TANTO TEMPO[兵庫県]
写真家・土田ヒロミが1976年から89年にかけて取り組んだシリーズ「砂を数える」。日本各地のお花見名所、観光地、遊園地、イベント会場などに集う大群衆を、引きのアングルで撮影したものだ。作品に写っているのは、まるで蟻の大群のような人、人、人。そこには厳格なルールがある訳ではないが、人々はある一定の秩序に基づいてまとまった行動を取っている。同時に、ギラギラした欲望というか、たくましい生命力が画面に充満しており、昭和後期の日本人のパワーに圧倒された。平成27年の今、日本人の生活は当時より遥に洗練されている。しかし生き物としての日本人は当時より弱々しくなっているのではないか。そんな思いがふと脳裏をよぎった。
2015/04/26(日)(小吹隆文)
佐藤雅晴「1×1=1」
会期:2015/04/18~2015/05/23
imura art gallery[京都府]
椅子に座ってショートケーキを食べる双子の姉妹、同じ姉妹の立ち姿、2個のショートケーキなど、2人(つ)尽くしの作品が並んでいる。それらは写真画像を元にコンピューター上で描いた絵画をプリントしたものだ。1人(つ)のモデルをダブルにしたのは違和感の演出であろう。作品のディテールを凝視すると、それが絵画だと分かる部分もある。しかし説明を受けなければ、多くの人が写真だと思い込むに違いない。この写真ともCGとも絵画とも言い切れないビジュアルの薄気味悪さは何だろう。来るべき世界を先取りしているから? 美しい外見とは裏腹に、モヤモヤが募る作品であった。なお本展には、漫画のコマ割りを流用したマルチ画面の映像作品もあった。画面に映る時計の時刻から、東日本大震災に言及したものと思われる。
2015/04/21(火)(小吹隆文)
楢橋朝子 写真展「biwako 2014-15」
会期:2015/04/15~2015/04/26
galleryMain[京都府]
楢橋が近年取り組んでいる、水面から風景を撮るシリーズの最新版。昨年から今年にかけて琵琶湖を取材したシリーズ約30点を展示している。自ら琵琶湖に入り、足がぎりぎり着く程度の位置から岸を撮影した作品は、撮影場所、天候、季節の違いにより様々な表情を見せる。しかし本作の真の主役は「水」そのもの。その浮遊感、漂流感、時には大波が襲い、作家が翻弄されている様子も伝わる。本作のテーマは、生と死の境界から現世を見ることではなかろうか。ちなみに本展は、Gallery Mainの移転リニューアル第1弾となる。以前に比べて大幅に増床した展示室を見て、同画廊の今後ますますの躍進を確信した。
2015/04/21(火)(小吹隆文)
プレビュー:palla/河原和彦「断面 SECTION」
会期:2015/05/02~2015/05/17
COHJU contemporary art[京都府]
写真や映像を折り返し重ね合わせ、それらを規則的にずらしていくことにより、現実の風景から思いもよらぬ時空間を取り出すpalla/河原和彦の作品世界。大阪を中心に活動していた彼が、初めて京都で個展を開催する。本展では、折り重ねられた空間をずらして行く過程に現れる瞬間に着目した映像作品2点を出品。我々の日常世界に隠された不可視の時空、それが現れる瞬間のクールなダイナミズムを味わいたい。
ウェブサイト:http://www.pallalink.net/modx/weblog/?p=2050
2015/04/20(月)(小吹隆文)