artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

新宮さやか展「Longing for the Eternal Touch」

会期:2015/02/21~2015/03/15

ギャラリー器館[京都府]

新宮さやかは、イソギンチャクのような触手を持つ異形の花のオブジェで知られる陶芸家だ。彼女はギャラリー器館で発表するようになってから、器作品も手掛けるようになった。その出来栄えは、最初の頃はオブジェと実用性の関係性に強引さが感じられたが、徐々にコツをつかんだらしい。本展の新作《萼容》では、造形性と実用性の美しい合一を見せている。もちろん作品は今後も進化を続け、外見は変化していくだろうが、大崩れすることはなさそうだ。オブジェも引き続き制作を続けており、美術と工芸、双方の面から今後の展開が楽しみな作家である。

2015/02/24(火)(小吹隆文)

プレビュー:和歌山と関西の美術家たち リアルのリアルのリアルの

会期:2015/03/14~2015/05/10

和歌山県立近代美術館[和歌山県]

和歌山出身あるいは関西を拠点に活動する1970年代から80年代生まれの5人のアーティスト(伊藤彩、大久保陽平、岡田一郎、君平、小柳裕)の仕事を紹介する。彼らが様々な手法、素材を用いて表現する作品には、本物と偽物、日常と非日常、ミクロとマクロ、妄想と現実など対極的な要素が混在している。それらを通して我々は、現代人が抱く現実への不信感、自分という存在の不確かさ、自らの足元を見直すなど、現代における「リアル」の感覚を再考することになるだろう。

2015/02/20(金)(小吹隆文)

プレビュー:Exhibition as media 2014 phono/graph ─音・文字・グラフィック─

会期:2015/03/21~2015/04/12

神戸アートビレッジセンター[兵庫県]

「音・文字・グラフィック」の関係性の研究と、それを取り巻く現在の状況を検証しながら形にすることを目的とするプロジェクト。2011年にdddギャラリー(大阪、現在は京都)で第1回の展覧会が行われ、その後、ドイツ、名古屋、京都、東京での開催を経て、この度の神戸展となった。今回は神戸アートビレッジセンターが有するシルクスクリーン工房の機能を生かした展開が披露される予定だ。参加作家は、鈴木大義、城一裕、藤本由紀夫、八木良太、ニコール・シュミット、intext、softpadの7組。なお本展は、神戸アートビレッジセンターとアーティストが企画立案から実施までを協働する展覧会「Exhibition as media(メディアとしての展覧会)」(2007年~)の今年度版である。

2015/02/20(金)(小吹隆文)

プレビュー:PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015

会期:2015/03/07~2015/05/10

京都市美術館、京都文化博物館、京都芸術センター、堀川団地(上長者町棟)、鴨川デルタ(出町柳)、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店[京都府]

京都市美術館と京都文化博物館を主会場に、京都市内の7会場で開催される大規模なアートイベント。河本信治(元京都国立近代美術館学芸課長)が芸術監督を務め、蔡國強、サイモン・フジワラ、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル、笠原恵実子、森村泰昌、ピピロッティ・リスト、田中功起、ヤン・ヴォー、やなぎみわなど約40組のアーティストが参加する。あえて統一テーマを設けず、現場で自律的に生成されるサムシングに重きを置いているのが特徴で、昨今流行りの地域型アートイベントとは明らかに一線を画している。また、会期中に市内の美術館、ギャラリー、アートセンター等で行なわれる展覧会や企画と幅広く連携しているのも特徴で、3月から5月初旬にかけての京都は、「PARASOPHIA」を中心としたアートのカオス的状況になるはずだ。

2015/02/20(金)(小吹隆文)

國政サトシ「スライドスライド」

会期:2015/02/17~2015/03/01

ギャラリー恵風[京都府]

大量の結束バンドを用いたオブジェ作品で知られる國政が、これまでとは異なるタイプの新作を発表した。それはビニールに染色を施した平面作品だ。作品には図柄の有無などいくつかの系統があるが、その制作法は相当に複雑であり、うろ覚えで説明するとかえって誤解を生じかねない。とにかく仕上がりが美しく、偶然の予期せぬ表情を取り込むこともできる。よくもこんな手法を思いついたものだ。筆者は最近、染色について原稿の依頼を受け、布、紙、皮革以外の新たな染色素材を研究すべきと無責任な提案を行なった。その記憶が冷めやらぬうち実践者が現われたのだから、これは嬉しい驚きだ。

2015/02/19(木)(小吹隆文)