artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

プレビュー:高松次郎 制作の軌跡

会期:2015/04/07~2015/07/05

国立国際美術館[大阪府]

1960年代の「読売アンデパンダン展」や「ハイッレッドセンター」での活動、「ベネチア・ビエンナーレ」(1968年)、「ドクメンタ」(1977年)への出品など、日本を代表する美術家として知られる高松次郎(1936~1998年)。彼の業績を、初期から晩年までの絵画、立体、版画作品約90点、ドローイング約280点、書籍・雑誌・絵本約40点、記録写真約40点で回顧する。高松の制作活動の推移や広がりをほぼ1年ごとに追える年代順の展示、アトリエの移築、記録のみで知られていた作品の展示、珍しい大判写など内容が充実しており、彼の回顧展として決定版的な意味を持つだろう。

2015/03/20(金)(小吹隆文)

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12の窓

会期:2015/03/07~2015/03/15

CAP STUDIO Y3[兵庫県]

神戸のC.A.P.にアトリエを構えるアーティストたちが、12の個室アトリエをはじめとする建物内のさまざまなスペースを舞台に、一斉に個展を開催した。C.A.P.のアトリエは普段から公開されているが、本展では、部屋を整理してホワイトキューブにする者、室内の配置をアレンジする者、普段の姿を見せる者など、展示形式はさまざま。街中の画廊で個展を行なうときと同じように本気モードで展示を行なっており、非常に見応えがあった。それでいて観客を迎えるウェルカムなムードが心地よかったことも付け加えておく。今回は出展者の一人が発案して始まったということだが、可能であれば今後も年1回程度のペースで継続してもらえないだろうか。出品者は、浅野夕紀、デイヴィッド・アトウッド、井階麻未、ペッカ&テイヤ イソラッティア、植田麻由、梶山美祈、川口奈々子、桜井類、柴山水咲、島村薫、田岡和也、築山有城、鳴海健二、藤川怜子、ポール・ベネエ、矢野衣美、山田麻美、山本千尋、前谷開の19組だった。

2015/03/14(土)(小吹隆文)

ミシャ・デリダー ジャパンスーツケースII

会期:2015/03/07~2015/03/28

ギャラリーギャラリー[京都府]

フランスのモード造形作家ミシャ・デリダー。彼女は服飾と立体を兼ねるような造形作品と、それをまとったパフォーマーによるダンスを作品としている。また近年は、スーツケースに作品を詰めて海外を訪れるスーツケース・プロジェクトも展開している。彼女は2013年に日本を訪れ、京都の丹後ちりめんや西脇の播州織など、日本各地の布地を入手した。本展の出品作はそれらを用いたものだ。大量のぬいぐるみと衣服が合体した作品、いくつもの袖を持ち、前後左右を問わず着用できる作品、無数の半球形の突起で覆われた作品など、彼女の作品はどれもユニークだ。動く姿を見られなかったのが残念でならない。リモコンで稼働する台座を作って衣装を着せれば、パフォーマーが不在でも動く姿を見ることができる。いや、無人劇のような新表現へとつながるかもしれない。次に来日する時に、彼女の表現はどのように進化しているだろう。その日がいまから楽しみだ。

2015/03/10(火)(小吹隆文)

摺師 戸田正の仕事

会期:2015/03/07~2015/03/29

COHJU contemporary art[京都府]

日本の伝統的木版画(浮世絵)の摺師である戸田正(1936~2000)は、1982年よりクラウンポイントプレス社(アメリカ)の日本木版画プロジェクトに摺師として参加し、ドナルド・ジャッド、フランチェスコ・クレメンテ、アレックス・カッツ、チャック・クロースなど、そうそうたるメンバーの木版画制作を手助けした。本展は彼の功績を再評価するもので、彼の工房(紫雲堂/京都市北区)に残された作品、校正摺り、道具類、新聞記事等の資料などを展示していた。出品物はどれも貴重なものばかりだが、作家の指定が入った校正刷りや、チャック・クロース作品の制作過程が分かる連作はとりわけ見応えがあった。日本の優れた職人技を顕彰する意味で、本展の開催は意義深い。

2015/03/08(日)(小吹隆文)

創生劇場 Ophelia Glass 暗黒ハムレット

会期:2015/03/07

先斗町歌舞練場[京都府]

シェイクスピアの『ハムレット』を原作に、山本萌(金沢舞踏館主宰)が演出し、小林昌廣(IAMAS教授)が脚色を担当した舞台公演。日本舞踊、能、浪曲、新内、華道、コンテンポラリーダンスが共演し、現代と古典がクロスオーバーする摩訶不思議な舞台が実現した。会場の先斗町歌舞練場も演目にマッチしていたと思う。作品の内容は、原作を相当読み込んでいないと追いつけないほどアレンジされていたが、西洋の物語を通して日本の伝統芸能に触れる経験は非常に新鮮だった。特に浪曲の春野恵子と新内の新内枝幸太夫は素晴らしく、今後も機会があればぜひ拝聴したい。

2015/03/07(土)(小吹隆文)