artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

《タンポポ・ハウス》

[東京都]

『日経アーキテクチュア』の特集で、藤森照信氏と対談を行なうために、以前は外観のみ見学したことがある自邸、《タンポポ・ハウス》の室内に初めて入る。素材や形態はきわめてユニークだが、やはりプランは普通だった。藤森デザインの歴史的な位置づけ、ヴェネツィア・ビエンナーレで展示した後に世界各地で茶室のインスタレーションを手がけるようになったこと、彼が注目する建築における地面との接合部などが話題になった。個人的にとりあえずの仮説を立てたのは、彼がポストヒストリーの人だということ。すなわち、彼が建築史をやってから建築家になったのはもちろん、もうあまり大きな構造的な変革はないという認識のもとでデザインをしていることを意味している。

2017/06/01(木)(五十嵐太郎)

未来への狼火

会期:2017/04/26~2017/07/17

太田市美術館・図書館[群馬県]

太田市美術館・図書館へ。2度目だが、図書館がオープンしてからは初の訪問である。今回は館の全体が稼働しているので、確かに2つの施設のアクティビティが相互に感じられる空間体験だった。美術の展示も、館内の図書エリアのあちこちに染み出す。開館記念展「未来への狼火」のタイトルは、太田市の清水房之丞の1930年の詩集からとったものである。3部構成になっており、最初が太田市の風土と景観を、淺井裕介、藤原泰佑、前野健太が発見する。続いて2階では、リサーチをもとに、郷土と所縁が深い、近代の絵画や工芸、石内都、片山真理らを紹介する。そして螺旋階段を上って、最後の部屋が、林勇気の映像インスタレーションで未来を描く。地域性と向きあう展示の態度は、アーツ前橋のオープニング展もほうふつさせるだろう。

写真:左下2枚=淺井裕介 右上から=藤原泰佑、片山真理、林勇気

2017/05/27(土)(五十嵐太郎)

オープンシアター2017

会期:2017/05/27

神奈川県立音楽堂[神奈川県]

神奈川県立音楽堂のオープンシアター2017へ。横浜国立大学の建築学科の学生らが館内を案内するほか、のちにいろいろと増築されたバックヤードも見学することができ、建築ファンを増やすよい機会になっている。親子や幼い子どもが多く集まったミニコンサートは、松田理奈によるヴァイオリンの独奏から始まり、曲ごとに横坂源のチェロ、加藤昌則のピアノが増えていく構成だった。それにしても、木のホールのせいか、弦楽器の響きのよいことに感心させられる。また、あちこちで子どもが泣き叫ぶなかで聴くクラシックの演奏もめずらしいというか、ある意味でシュールな体験だった。

2017/05/27(土)(五十嵐太郎)

観世能楽堂

GINZA SIX[東京都]

2度目のGINZA SIXだが、今回は地下の観世能楽堂を見学した。松濤から移築したもので、前回と同様、鹿島建設が担当したという。客席を少し減らし、ゆったりさせつつ、正面席は増やし、全体としては細長い平面のホールになった。本舞台の屋根は天井から吊っており、多目的ホールとしての使用も想定し、隅の柱をとれるという。また非常時の備蓄や、帰宅困難者の滞在も想定しており、都心ゆえのスペックを備えている。

2017/05/19(金)(五十嵐太郎)

チューリッヒ動物園

[スイス]

チューリッヒ動物園へ。いわば学術展示+テーマパーク+ランドスケープがミックスされた場だが、生態系ごと見せる工夫された展示が面白い。特にマーカス・シュイッツ・アーキテクトンによる象舎は建築的に特筆すべき空間だった。コンペで選ばれた亀の甲羅みたいなドームである。これは3層のCLTによる木造の大屋根になっており、ランダムな隙間はガラスを嵌めているかと思いきや、じつは小さな空気膜が入っている。

写真:右下3枚=マーカス・シュイッツ・アーキテクトンによる象舎

2017/05/14(日)(五十嵐太郎)