artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
福島県富岡町
[福島県]
日帰りで、いわきから6号線をたどりつつ、久之浜、広野、木戸、富岡を経由し、行けるところまで北上した。Jヴィレッジ周辺は本当に原発労働者の拠点だった。いつも仙台から南下し、南相馬の方に訪れるので、反対側から行くのは、3.11の二カ月後以来である(当時は久之浜まで常磐線が通っていた)。久之浜は宮城県や岩手県の被災地と同様、破壊された住宅地は更地となり、次へのステップに向かっていたが、途中からは、ほとんど人の気配がなくなる。動きもなく、音もない街。あの日から時間が止まったまま、宮城・岩手とは全然違う状況だ。建物自体はあまり壊れていないが、人がいないから、おそらく水のインフラも復旧していない。『思想地図』の「福島第一原発観光地化計画」のコース1と言うべき「富岡町へ行く」を道案内のガイドのようにしてまわってみたが、東京から日帰りで誰でも行くことができる。放射線の影響により、人が住まなくなったエリアの広大さを、一部だが体験し、忘却が進むなか、もっと多くの人が目にしてよい風景だと思った。
2014/04/29(火)(五十嵐太郎)
アパートメント・ワンワンワン──中之島1丁目1-1で繰り広げる111日
会期:2014/03/29~2014/07/06
京阪電車なにわ橋駅「アートエリアB1」[大阪府]
京阪なにわ橋駅のアートエリアB1へ。大学とNPOと京阪電車が連携して、商業施設でうめることは難しい駅の一角を社会実験的なアートスペースに使う場所である。1が並ぶ住所の番地にちなみ、アパートメント・ワンワンワン展を開催中だった。公募により、期間中は部屋に見立てたパヴィリオンにおいて展示を行なう作家=入居者が変わる仕組みである。grafとIN/SECTSが管理人となり、ドットアーキテクツも展示のデザインに関与している。
2014/04/27(日)(五十嵐太郎)
大阪市立住まいのミュージアム 大阪くらしの今昔館
マインドフルネス!──高橋コレクション展 決定版2014
会期:2014/04/12~2014/06/08
名古屋市美術館[愛知県]
名古屋市美の「マインドフルネス!──高橋コレクション展 決定版2014」へ。初見の作品は少なかったが、やはり個人所蔵だけで、これだけの日本現代美術の入門ができるのはすごい。むろん、全体を代表するわけではないが、奈良美智、村上隆、会田誠など、ポップと繊細なテイストをもったある傾向の流れをよく示しており、高橋好みもよくわかる。名古屋ということで、名知聡子、和田典子ら、地元関連の作家も選んでいた。塩保朋子の大がかりな切り絵のようなインスタレーションは吹抜けにうまく収まっていた。
2014/04/26(土)(五十嵐太郎)
アトリエ・ワン:マイクロ・パブリック・スペース
会期:2014/02/15~2014/05/06
広島市現代美術館[広島県]
広島現代美術館にて、アトリエ・ワンの「マイクロ・パブリック・スペース」展を見る。ホワイトリムジン屋台やマンガ・ポッドなど、彼らが越後妻有や韓国など、国内外の芸術祭などで制作してきた家具以上、建築以下の作品の全員集合と言うべき内容だった。ゆえに最後の部屋の模型群を除いて、基本的に体験できる1/1の空間を出現させている。美術館の吹抜けには、これを使って下階に降りる新作のインスタレーションを挿入する。展示の後半では、世界各地の街と人のふるまい観察も、映像やドローイングなどでまとめて紹介していた。彼らが住宅設計の活動と平行して、小さな公共スペースの可能性を考えてきた軌跡がよくわかる。コレクション展は、幾何学をテーマとしていたが、さまざまな絵画を横一列につなげた展示が興味深かった。ところで、同じ日に名古屋市美と広島現代美を見たのは初めてである。ともに1980年代の黒川紀章の美術館三部作になっているだけに(もうひとつは埼玉県立近代美術館)、共通点と相違点がすぐに比較できる体験だった。
2014/04/26(土)(五十嵐太郎)