artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

《あべのハルカス》

[大阪府]

日本一高いビルの記録を久しぶりに更新したあべのハルカスへ。駅が近接し、すぐに見上げるかせいか、あるいは比較対象がないからか、日本一高い実感はわかない。過度なシンボル性は避けた透明感は、今風か。水平のショッピングモールとは対照的に、駅横の百貨店も14階まで垂直に展開(上のフロアは細いし)。展望台は時間がなく、次の機会に。

2014/04/06(日)(五十嵐太郎)

加賀正太郎+安藤忠雄《アサヒビール大山崎山荘美術館》

[京都府]

続いて、大山崎山荘美術館に立ち寄る。聴竹居と同じ頃の大正~昭和初期に建設されたものだが、こちらはベタな洋館だ。おそらく、当時は山荘の方が「豪華」なイメージだったのだろう。平成に安藤忠雄のリノベーションが入り、コンクリートのモダニズムと様式建築という新旧の対比が鮮やかに浮かびあがるようになった。地形を切り裂く階段など、既存のファサードへの影響を低減しつつ、自然に挿入された幾何学が美しい。

2014/04/06(日)(五十嵐太郎)

藤井厚二《聴竹居》

[京都府]

山崎に向い、藤井厚二が設計した聴竹居を見学した。本当に細かい。なるほど、家具・インテリアから建築のデザインが連続的に展開されている。フランク・ロイド・ライトやリートフェルトの同時代に、日本でもこのレベルのモダニズムに到達していたことに感心させられる。むろん、すでに伝統的な日本建築の水準が高かったこともあるが、さらに現在のパッシブ・デザインの先駆と言うべき、環境制御の工夫も行なわれている。聴竹居にはまる人がいるのもうなずけよう。ガイドも熱弁だった。

2014/04/06(日)(五十嵐太郎)

《大宮前体育館》

[東京都]

荻窪にて、青木淳が設計した《杉並区大宮前体育館》を見学する。これも住宅地に囲まれているが、驚くべきは家よりも低い体育館とプールのヴォリュームだ。コンペでも、もっとも低い案だったらしい(槇文彦の案よりも)。低いが、広い屋上からの風景は意外に見たことがない。ザハの新国立競技場案とは対照的な考えだ。大宮前体育館の外周はSANAA的な曲線ではなく、分節したガラス面の連続で周囲のスケールと調整する。内部に入ると、深く掘られた地下から直方体のコンクリートのヴォリュームが入れ子状に立ち上がり、印象が変わる。この巨大な壁も近づくと、全体が生き物のようにゆるやかに波うち、また驚く。体育館の床の色彩やかわいいプールも印象的だ。ところで、通常の見学会と違っていたのは、杉戸洋、青木野枝、米田知子ら、あいちトリエンナーレにも参加した現代美術家が参加していたこと。やはり、アーティストとの親交が深い青木淳ならではだろう。

2014/03/29(土)(五十嵐太郎)

鶴ヶ島太陽光発電所 環境教育施設《eコラボつるがしま》

[埼玉県]

鶴ヶ島にて、藤村龍至の手がけた《eコラボつるがしま》を見学する。郊外住宅地に囲まれた工場跡地というロードサイド的環境を受けつつ、パブリックミーティングによる集合知の加算を経て、生成された建築だ。と同時に、ヴェンチューリ、東工大系列、篠原一男、カーンらのデザインを参照している。ゲンロンのトークイベントでも話題になった、藤村流シンボリズムの表現を試みたものだ。

2014/03/29(土)(五十嵐太郎)